WEDGE REPORT

2016年4月27日

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 4月1日午前10時。まだ家族連れもまばらな二子玉川駅で、東京急行電鉄の子会社東急パワーサプライは、電力自由化スタートの記念イベントを開催した。同社は「東急でんき」のブランド名で電力小売りに参入している。壇上に立った村井健二社長は「電気サービスを選べる時代が到来した。東急線沿線が住みたい沿線日本一になることに貢献したい」と力強く語った。

 4月1日時点で3万件を超える申し込みがあった東急でんき。非エネルギー系新電力としては随一の存在感を誇る。

 Wedge編集部は取材の中で、電力自由化の本質を映すある決定的な事実をつかんだ――。

4月1日の電力全面自由化に合わせ、ホールディング・カンパニー制に移行した東京電力(JIJI)

 2000年以降、進められてきた電力の小売自由化。16年4月からは「低圧」区分の家庭や商店なども加わり、全面自由化された。

 全面自由化とは、電力会社の地域独占を解消し「全ての消費者が、電力会社や料金メニューを自由に選択できる」(資源エネルギー庁ウェブサイト)ようにするのが目的だ。

 スタート時点で、小売を行うため登録した事業者の数は280社にのぼった。しかし、4月15日時点で新電力へ切り替えた件数は全国で68万件。もっとも切り替え率が高かった東京電力エリアでも、全世帯数のうち約2%の43万件にとどまった。東京電力福島第一原発事故を契機に「電力システムの抜本的見直しが国民に求められている」(枝野幸男経済産業大臣<11年当時>の閣議後記者会見)という触れ込みで始まったわりにはずいぶん「低調」だ。

 大きな存在感を放ったのが東京ガスとJXエネルギーだ。東京ガスへの切り替え申し込み件数は4月4日時点で約24万件。JXエネルギーへの申し込みは4月1日までに8万件を超えた(どちらも東京電力エリア)。

 両社はどちらも約160万kWの自社電源を持つ旧来からの"エネルギー企業"だ。小売する電力は「自社電源で提供」(大村博之・JXエネルギー電気事業部長)している。東ガスも自社電源に十分な余裕がある。

「日本卸電力取引所や他社から調達すると価格がぶれるため、事業の先行きが見通しづらい」(大村氏)。JXエネルギーは石油精製の過程で出る残渣を発電に使うなど、燃料費を抑えてコストを低減している。

東急でんきは東電のステルス部隊か

 ソフトバンクは自由化に際して、東電の販売代理店となることを選んだ。ソフトバンクの馬場一・執行役員は「電力事業単体では販売手数料を受け取るだけで、そんなに利益が見込める事業じゃない。解約率を低減させるため、他携帯キャリアに負けない選択肢を提示する必要があったので電力供給力1位の東京電力と組むことにした」と語る。

「供給力」。電力自由化のポイントはここにある。

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