日本とインドは
自然な同盟相手となれる


ブラーマ・チェラニー(Brahma Chellaney)
ニューデリーの民間シンクタンク「政策研究センター」で、戦略研究の教授。主著『アジアの巨大勢力(Asian Juggernaut)・中印日の台頭』は近く米国でも刊行予定。

WEDGE REPORT

ビジネスの現場で日々発生しているファクトを、時間軸の長い視点で深く掘り下げて、日本の本質に迫る「WEDGE REPORT」。「現象の羅列」や「安易なランキング」ではなく、個別現象の根底にある流れとは何か、問題の根本はどこにあるのかを読み解きます。

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過渡期にあるアジアで勢力不均衡の不気味な影が広がる中、いまや何より重要なのは、長期の安定を確保するため力を注ぐことである。世界のジオポリティクス(地政学)は変化のただ中にあり、その軸心をなすのがアジアであることは言をまたない。のみならず、アジアを襲う課題とは、それ自体が世界的規模での戦略問題となりつつある。

 だというのに、米国大統領のバラク・オバマ氏ときては、急速な勢力の増強と、腕っ節を誇示するごとき態度とでアジアの安定を脅かしつつある当のその国に、随分とご執心の様子だ。北京を訪問したオバマ大統領は、幅広い項目を示してあれやこれやと中国の助力を求めた。――中国が米国大統領を必要としている以上に、米国の大統領こそが中国を必要としている――はっきりしたのはそのことである。

中国の野心を
是認したオバマ

 ここへきて、新しい米中関係の呼び名がオバマ政権から出てきた。「戦略的不安除去」という。この新しいキャッチフレーズ自体、中国の野心を今まで以上に是認しようとする米国の意図を示唆するものだ。

 このようなアプローチは、日本に安全保障上のジレンマを突きつける。1990年代の中国は、ロシアの衰退によって利益を得た。21世紀入りしてからというもの、今度は日本にとって損失となるかたちで、中国は自らの戦略空間を拡大してきた。そしていまや、中国は世界第2の経済大国の座を奪おうとしている。

 このまま日本が経済的に衰退していくと、その苦しい防衛事情はくっきりあぶりだされていく。それというのも日本政府にとって防衛とは「外注」するもので、米国は「外注先」だったからである。これを妥当ならしめていたのは、経済力をつけることに専念するという路線だった。

 加えて日本にとって好ましくないのは、オバマ政権の外交政策において、中国が占める優位性がもはや疑いをいれないものとなったということだろう。なるほど、オバマ大統領は就任早々、ホワイトハウスを訪れる最初の外国首脳として日本の麻生太郎首相(当時)を招いた。2月にアジアを訪れた(クリントン)国務長官と同様、オバマ大統領のアジア訪問も、まず日本から始まり中国へと向かった。だが、歴訪の大団円が中国だったことを誰が疑えるだろう。

 米国には、日本との間に古くからの同盟がある。インドとの間には新しいパートナーシップがある。かといって日本やインドの顔を立て、急拡大している中国との関係を損なうようなことはしないということも、米国は言外に言おうとしている。

 改めて米中経済の相互依存ぶりを見るならば、米国は、中国からの資本流入を必要とし、中国は米国の消費市場を必要としている。その程度たるや、このごろでは核戦略のひそみにならい、どちらか一方が足抜けしようとするや否や、相互の破壊が約束されてしまう「MAD(マッド・相互確証破壊)」のような関係だとする向きもある。

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