WEDGE REPORT

2016年5月24日

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 米特殊部隊はこのほど、アフガニスタンのイスラム過激派組織タリバンの最高指導者アクタル・マンスール師を無人機攻撃で暗殺した。伊勢志摩サミットのため来日途上のオバマ大統領は「重要な一里塚」としてその成果を誇ったが、タリバンがアフガン駐留軍などへの報復攻撃を激化させるのは必至。暗殺でアフガン情勢は火に油を注がれ、一段と泥沼化しそうだ。

タリバンに破壊されたバーミヤンの石仏(iStock)

オバマ氏、数週間前に承認

 暗殺作戦は21日、マンスール師がパキスタン南西部バルチスタン州の州都クエッタ近くの幹線道路を車で移動している際に敢行された。無人機によるミサイル攻撃でマンスール師ら2人が死亡した。タリバンの指導部はアフガンから隣国パキスタンの同州に事実上の本部を構え、アフガンの戦闘を同地から指揮してきた。

 昨年7月、タリバンの創設者で指導者のオマル師が2年前に死亡していたことが公表され、その後継にナンバー2のマンスール師が就いた。しかし、マンスール師は米国、中国、パキスタンが仲介するアフガニスタン政府との和平協議に応じようとしなかった。このため、米国は同師の排除を決断。米紙によると、オバマ大統領が数週間前に同師の暗殺を承認した、という。

 アフガニスタン情勢は、北大西洋条約機構(NATO)軍を主体とする国際治安支援部隊が2年前に戦闘任務を終了し、アフガニスタン軍へ治安維持権限が委譲された。駐留軍の中核となってきた米軍も16年末までに訓練部隊を残して撤退する予定となっていた。

iStock

 しかし、タリバンが勢力を盛り返し、首都カブールなどでテロを続発させたほか、昨年秋には北部の主要都市クンドウズを制圧するなど国土の半分以上を支配下に置いた。このため米軍がこのまま撤退すれば、タリバンが全土を掌握することになるとの危機感がオバマ政権内部に深まり、16年以降も約6000人規模の部隊を残留させることになった。

 タリバンは4月もカブールの自爆テロで約70人を殺害するなど攻勢を強めていたが、今回マンスール師が暗殺されたことに反発し、アフガン治安部隊や米軍への報復攻撃を激化させるのは間違いない。このため、米国が駐留部隊の縮小どころか、逆に増援を再考しなければならないのではないか、との観測も出始めている。

 アフガニスタンでは、過激派組織「イスラム国」(IS)もパキスタン国境沿いの東部を中心に活動を活発化させ、タリバンとの戦闘を繰り返しており、タリバンの指導者が不在になった混乱に乗じて勢力拡大に動く可能性もある。そうなれば、アフガンの泥沼化が一段と強まる懸念がある。

 またタリバン内部では、後継指導者をめぐる権力闘争が激化する雲行きだ。マンスール師の指導者就任の際も、オマル師の長男ヤクーブ師一派との対立が先鋭化した経緯がある。今回も指導者の地位を狙うヤクーブ師やタリバンの最強硬派シラジュディン・ハッカニーらとの権力闘争が起きそうだ。

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