中島厚志が読み解く「激動の経済」

2009年12月25日

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中島厚志 (なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

 景気は緩やかに回復しているが、賃金下落などで回復感はない。その中で、第2次補正予算がまとまり、来年度予算案も今夕(12月25日)、閣議決定されると発表されている。まずは本稿執筆時点で確定している第2次補正予算についておさらいしておきたい。そのポイントは、財政赤字拡大とのバランスが問われる中で、どの位景気・デフレ対策として有効かという点にある。

第2次補正予算は評価できる

 今回の第2次補正予算(「明日の安心と成長のための緊急経済対策」)は、「雇用」、「環境」、「景気」、「生活の安心確保」、「地方支援」、「国民潜在力の発揮」から成っており、事業規模24.4兆円に上る。その中で、実際の財政支出に当たる部分は7.2兆円であるが、3.5兆円が地方支援に充てられており、そのうち税収減に伴う地方交付税交付金の減額補填分が3兆円程度となっている。言い換えれば、今年度予算との対比で追加的な支出は、この補填分を除いた4.2兆円程度ということになる。

 景気や雇用などを支える内容の中で注目されるのは省エネ家電のエコポイント制度を9カ月延長すること(期限2010年末)とエコカー補助金を6カ月延長すること(期限2010年9月末)である。エコカー減税こそ3年間続く措置であるものの、エコカー補助金やエコポイント制度は2010年3月末で終了とされてきたことから、そのまま終了となれば景気への影響が懸念され、来年前半に景気二番底を見込む要因にも挙げられてきた。

 そのエコカー補助金とエコポイント制度が延長となり、10年1~3月期の期限切れ前の駆け込み需要と4月以降の反動落ちがなくなることは、大いに評価できる。しかも、終了時期が互いに3カ月ずれることで、終了前後の影響が重ならないように配慮されていることも、政府の苦心の跡が窺える。同様に、雇用調整助成金の支給要件が緩和されたことも、今後の雇用悪化を食い止める大きな措置と言える。

 もっとも、望ましい政策が盛り込まれているとはいえ、今次2次補正予算では景気を押し上げ、デフレ脱却を加速させるような効果は大して期待できない。住宅版エコポイント制度のように、環境対応や大きく落ち込んだ住宅市場を支える政策として期待されるものではあっても、足元の厳しい雇用所得環境下では、住宅着工の増加等景気押し上げにすぐ寄与するとは見込みにくいものもある。新政権になって第1次補正予算のうち2.7兆円が執行停止となったが、今回の第2次補正予算はその減額分を補う程度の経済効果に止まるものと見られよう。

 しかし、もっと大きな補正予算を打つべきであったかと言えば、財政赤字は危機的な水準にある。来年度予算で赤字国債がさらに増発となりかねない情勢も勘案すれば、今回の補正予算規模が妥当なところであろう。厳しい財政事情を加味しつつ、可能な範囲で雇用や地方経済といった優先順位の高い分野に的を絞って対策を打つ。まさに今回の経済対策はそれに近く、その限りにおいては、今回の第2次補正予算は全体として評価できる。

予算編成の自由度は失われつつある

 一方、来年度予算はどうか。まず、概算要求額が95兆円超になったことに意外感はない。民主党のマニフェストでは2010年度の新政策に7.1兆円を要するとしており、今年度当初予算88.5兆円に新政策分を加えれば概ね95兆円超になるからである。むしろ、課題は、予算のムダづかい排除や埋蔵金などで滞りなくこの7.1兆円の財源が賄え、国債新規発行額が今年度当初予算時の44兆円以下に抑えられるのかにあった。

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