ASEANスタートアップ最前線

2016年6月9日

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宮崎学 (みやざき まなぶ)

ベンチャーキャピタリスト

IMJ Investment Partners, Principal。2011年に株式会社電通に入社。以来、一貫してデジタル・マーケティング業務に従事。大手通販企業や金融機関のクライアント担当として、デジタルメディアを活用したマーケティング戦略立案と、事業成長にコミットした広告運用を得意とする。2015年、IMJ Investment Partnersに参画。ASEAN各国の投資案件発掘に加え、投資先の経営支援を行う。日本企業のアジア進出支援、アジアベンチャーの日本進出支援も担当。筑波大学にて学士(国際関係学)、東京大学にて工学修士(技術経営戦略学専攻)を取得。

※IMJ Investment Partnersは、シンガポールを拠点に、東南アジア全域で活動するベンチャーキャピタルです。本連載、並びにIMJ Investment Partners へのお問い合わせ・ご要望はこちら

 6月に入り、私のシンガポール生活も1年が過ぎた。シンガポールの消費者向けテックサービスで、この競争環境が特に激しくなった業界が、フード関連サービスだ。フードデリバリーに代表されるフードテックは、スタートアップの世界では、その複雑さから、ビジネスとして成立させるのが難しいといわれている。

UBEREAT

 ところが、2016年に入り、特にシンガポールでは、そのフードスペースに新たに参入する企業が多くなっている。先月末のビッグニュースは、あのライドシェアアプリUberがついに「UBER EATS」というフードデリバリーサービスを始めたのだ。

 そこで、今回は、シンガポールのフード関連スタートアップを、業界のトレンド共にお伝えしたい。

東南アジアでフードテックがウケる理由とは?

 そもそも、なぜ東南アジアではフードデリバリーを代表とするフード系ITサービスに人気が出るのであろうか。幾つかの要因があるが、まずは常夏の天候だ。単純に、「暑くて外に出たくない」 ⇒ 「出前しよう」、という感覚だ。湿度が高く、30度を超える中、お気に入りのレストランに15分も歩いて行く気には到底なれない。5分外を歩けば、人によっては汗だらけになってしまう。オフィスや自宅に好きなレストランの食事を届けてくれるのならば、これほどうれしいことはない。

UBER EATS

 次に、交通インフラの問題だ。シンガポールはバスや地下鉄が発達しているため、東南アジアと比べるとまだましだが、全ての人がスーパーの近くに住んでいるわけではない。例えば私の場合、最寄りの駅から徒歩15分のところに住んでいるため、基本はバスで移動する。野菜や果物、惣菜を通勤帰りに買おうとすると、重いし、これまた暑い笑。日本食や、オーガニック系の野菜を買おうとすると、買える場所は限られるため、移動コストが嵩むのだ。他の国では事情がもっと悪い。交通渋滞で有名なジャカルタでは、野菜をデパートで買って1キロ先の自分の家に帰るのに、仮にタクシーを使っても、下手したら1時間はかかる。デリバリーを頼んで時間もみたい、というニーズは強く存在するのだ。

 フードは人間の生活にかかせない毎日人口×3食×365日=市場規模全体である。市場には明確なニーズが存在するため、こぞってスタートアップがあの手この手で挑戦している。明確なニーズはあるものの、ビジネスのオペレーションはたやすくない。そもそもの前提として、お腹が減るからご飯を注文するのだ。顧客のほとんどは1時間以上も待てない。ましてや、フードである。配達中にぐちゃぐちゃになるのは無論いけないし、冷めたごはんは食べたくない。早く、美味しい食事をそのまま運ぶ―このオペレーションを一定のクオリティで行うのは、決して簡単なことではない。

ロケットインターネットのフードパンダは
東南アジアで苦戦中

foodpanda

 私が渡星(シンガポール=星加坡)したころ、弊社が構えるビルの一階でやたらコマーシャル映像を流していたのが「FoodPanda」だった。かのロケットインターネットのフードデリバリーサービスで、もはや世界中で展開している。彼らは、圧倒的な資本力を武器に優秀なビジネスマンやエンジニアを集め、レストラン向けのCRMツール(アプリ)を開発。これをレストラン開拓の武器にしてフードパンダのプラットフォームに呼び込む一方、一件当たりのオーダーに対して一定の割合でマージンを得るのが彼らのビジネスモデルだ。

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