世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2016年6月15日

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 米カーネギー平和財団のウェーリーが、5月12日付のウォール・ストリート・ジャーナル紙で、民兵組織の跋扈するリビアの現状につき現地からレポートし、米欧による過早な対IS作戦支援は武装勢力間の対立を激化する可能性があり注意を要すると指摘しています。主要論点は次の通りです。

 リビアでは、それぞれの地域で、民兵組織がISと戦っているが、本音は自分達の支配地域の確保であり、本気でISと対決しているようには見えない。他方、ISはシルテの支配を固めている。

 3月末、国連の仲介により統一政府組織として新たに設置された大統領評議会がトリポリに入り、米欧などはこれがISに対する作戦の土台になると期待したが、同評議会の権威発揮は進んでいない。

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石油を手放したくない民兵組織

 ISへの対抗には様々な問題がある。第一の問題は米欧が支援を提供できる統一された軍事組織が未だに存在しないことである。ハリーファ・ハフタルが率いる東部の強力な民兵組織は統一政府樹立合意に反対し、自分の地域にある石油をトリポリの政府とは別途独自に売ろうと試みている。他の民兵組織も表面上は統一政府を支持するが、実はそれぞれの地域、部族、或いはパワー・ブローカーとの結び付きを第一に考えている。

 西側の特殊部隊はISとの戦闘にあたり、民兵組織を使って行くしかないが、それは危険なことだ。それは国内抗争を激化させ、国家統一を進展させることにはならないからだ。

 民兵組織が外部から得る支援を対IS戦闘に使うかどうかはわからない。武装勢力にとっては地域での競争相手に勝つことがより重要だ。米欧にとって民兵組織は望ましくないグループのことが多い。昨秋、ベンガジではISとの戦闘という名のもとに民兵が私怨や部族の怨念を晴らしているのを見た。

 民兵組織への支援は、統一政府に忠誠を誓ったグループで、人権違反には厳しく、将来の軍事要員解除と文民主導の軍隊にコミットした組織に限るべきだ。IS支配から解放された地域では、住民を迅速に帰還させ社会の和解を促進する計画をたてる必要がある。このことはシルテで最も重要である。シルテには最近西部や東部から民兵が集まって来ている。それぞれが作戦室を立ち上げているが、武装勢力の間で作戦の調整をするようなことはない。

 最近立ち上げられた統一政府はミスラタの民兵に依存している。しかしミスラタの部隊は弱い。先週、ISはミスラタに自爆攻撃を行った。さらにシルテの部族はミスラタへの対抗心から暗黙にISの支配を歓迎している。シルテへの攻撃に当たってはシルテの住民の反感を買わないようにしなければならない。ハフタルの部隊が一方的にシルテを攻撃すれば西部の民兵勢力は反発する。先週ハフタルの「リビア国民軍」はミスラタの部隊を叩いたが、その結果はISに陣地を開けることになっただけだ。シルテ解放作戦への西欧の支援は統一された軍事組織ができたときにのみ行うべきだ。

出 典:Frederic Wehrey‘Struggling to Fight Islamic State in a Fractured Libya’(Wall Street Journal, May 12, 2016)
http://www.wsj.com/articles/struggling-to-fight-islamic-state-in-a-fractured-libya-1463093214

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