WEDGE REPORT

2016年6月10日

»著者プロフィール
著者
閉じる

小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

 2016年6月8日から9日にかけて、尖閣諸島周辺の接続水域にロシア及び中国の艦艇が相次いで進入した。これまでも中国は接続水域内に国家海警局(沿岸警備隊)の巡視船を恒常的に進入させてきたが、軍艦はこれが初めてである。一方、ロシア海軍について、防衛省は「過去にも例がある」としており、接続水域内に軍艦を進入させたのはこれが初めてというわけではないようだ(後述)。

 これに対して日本政府は、安倍首相を議長とする国家安全保障会議を開催するなど極めて緊迫した反応を見せ、日本のマスコミでも大きく取り上げられた。どちらかというと、これはロシアというより中国の行動に対する反応であったと見られる。

果たして中露は連携していたのか…(iStock)

 そもそも接続水域とは領海の外側12カイリの水域であり、国家の領域ではないが関税や出入国管理などの管轄権は及ぶとされる。軍艦の航行については、無害航行が認められているため、本来はロシアや中国の軍艦がこの海域を通過することには法的問題はない。

 だが、中国は尖閣諸島を自国領であると主張して日本政府と対立し、日本側の抗議にもかかわらず、巡視船その他の公船を恒常的にこの海域に進入させ続けてきた。こうした経緯があるために、今回の中国艦進入には大きなインパクトがあったのだろう。一方、ロシアは尖閣問題に関しては中立を維持しており、日本政府ともこの点では対立していないため、軍艦が通るといってもその意味するところはかなり異なる。

 日本の外務省が午前2時に中国大使を呼びつけて抗議を行うという強硬な姿勢に出たのに対し、ロシアに対しては「外交ルートを通じた注意喚起」(菅官房長官談話)に留めたのも、こうした経緯の違いが大きく影響していたと言える。

最初に進入したのはロシア艦

 では、今回の事態はどのようにして生じたのだろうか。

関連記事

  • PR
  • 新着記事

    »もっと見る