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2015年6月4日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

財団法人未来工学研究所客員研究員

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

 昨年に発生したウクライナ危機以降、中露の接近が取り沙汰されている。今年5月にモスクワで開催された対独戦勝記念パレードでは、訪問した習近平国家主席をロシアは主賓待遇で扱い、多数の経済協力プロジェクトに調印するとともに、地中海では初めてとなる中露合同海上演習も実施された。

(画像:iStock)

 だが、ユーラシア大陸の巨大国家同士がそう簡単に手を結べる訳ではないことは歴史が証明している。異なる戦略的利益を抱え、しかも中国に経済力で大きく劣るロシアがどのように中露関係を構想しているのかは国際的な注目の的である。

 これについて、ロシア政府の国営紙『ロシア新聞(ラシースカヤ・ガゼータ)』が高等経済学院のセルゲイ・カラガノフ教授に行った興味深いインタビューが掲載された。高等経済学院はメドヴェージェフ政権下で経済近代化の頭脳として設立された政府肝いりの高等教育・研究機関であり、なかでも世界経済政治学部長を務めるカラガノフ教授は、ロシアの対外政策に関する主要ブレーンの一人として有名な人物である。

 中露接近はどこまで進むのか、果たしてロシアにとって危険はないのかについて、カラガノフ教授の見解を2回に分けてご紹介したい。

2つのメガ・プロジェクトに関する合意

エフゲニー・シェスタコフ「中国の風がロシアの帆に吹き付ける 中国とロシアは新たな大ユーラシア社会を作り上げる」『ロシア新聞』2015年5月31日

モスクワで開催された「国際問題に関するロシア会議」において中露関係についての議論が行われ、北京との新たなパートナーシップに関して多くの議論が交わされた。その要諦は何であり、何が新しいのだろうか?これについて、高等経済学院世界経済政治学部学部長で政治学者のセルゲイ・カラガノフが『ロシア新聞』に語った。

カラガノフ:私が思うに、新しい点は、中露が2つのメガ・プロジェクトに関する相互の統合と協調について合意した点である。それは、中国の経済シルクロード地帯とロシアが主導するユーラシア経済同盟だ。以前、多くのウォッチャーは、両プロジェクトが競合するだろうと見ていた。今では、全ては真逆に進んでいる。我々が約半月前に公表したヴァルダイ・クラブの報告書でエッセンスとして述べられていたように、ユーラシアの中心部において誰にとっても利益となる新たな経済発展地帯が形成される可能性がある。そして、これは大ユーラシアの新たなコミュニティの中心となりうる可能性が出てきた。

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