WEDGE REPORT

2009年1月20日

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谷口智彦 (たにぐち・ともひこ)

慶應義塾大学大学院SDM研究科特別招聘教授

明治大学国際日本学部客員教授。2008年7月まで3年間外務省で外務副報道官。元日経ビジネス記者、編集委員、ロンドン外国プレス協会会長。著書に『同盟が消える日』(編訳、ウェッジ)など。(2013年1月末日現在)

  日本は広く国益を再考し、遠洋で続けてきた調査捕鯨から手をひくべきだ。代わりに日本沿岸で赤字を出しつつ操業している零細捕鯨を何とか採算に乗せ、鯨肉流通と、鯨の食文化を共に残す方途を探りたい。

 今しも日本の捕鯨船団は、南氷洋上で愚連隊もどきの反捕鯨団体に追われている。これの圧力に屈すると思えば片腹痛いから、もっと大きな国益の収支を見るのである。

日本が抱える2つの捕鯨

 捕鯨には船団を連ね数カ月遠洋に出て捕るタイプと、沿岸から日帰り圏内で捕る種類の2つがある。

 国際捕鯨委員会(IWC)の措置によって、この両方とも商業目的である限り一律停止となって久しい。

 日本だけは両方を続けてきた。遠洋型はIWCが例外扱いする科学調査目的のためとして。沿岸小型捕鯨は、IWCが保護対象としない鯨種に限って捕ってきたものだ。

 日本はIWCの場で、遠洋調査捕鯨の正当性を主張し、調査によって十分な個体数を確認できた鯨種について商業捕鯨の再開を唱えている。同時に、沿岸小型捕鯨の捕獲対象として利幅の見込める鯨種を加えるのを認めさせようとしてきた。

 具体的にはミンキー(ミンク)鯨で、これの捕獲を許すのは商業捕鯨の是認となり、IWCの合意を得るのは難しい。ただし少数社会集団に特有の捕鯨に、民俗性維持の観点から認められた実例がある(デンマークやアイスランド)。それと同等の処遇を、日本の零細捕鯨にも与えるべきだと主張している。

 つまり日本は調査捕鯨から商業捕鯨に至る道と、沿岸小型捕鯨存続の道の両方を追求している。が、実は両者は並び立たない。調査捕鯨が大量に捕り日本にもたらしているのが、ほかならぬミンキー鯨だ。「高級鯨種」が大量に出回ることで鯨肉市況は軟化する。それが一因となり、沿岸小型捕鯨の採算が改善しないという悪循環が生まれるのである。

 本稿の言うのは、無理を重ねて続けても本来目的である商業捕鯨再開につながらない調査捕鯨をやめ、それを交渉のテコとし、引き換えに地域の文化風土に根ざした沿岸小型捕鯨がせめても採算に乗るようはからったらどうかということである。

 遠洋捕鯨は世界中で日本しかしていない。IWCを無視して商業捕鯨を続けるノルウェーに比べ、科学調査活動なのに日本の捕鯨がとりわけ激しい批判の的となるのはそこに起因する。ノルウェーの捕鯨は、自国領海内でほぼ完結するのである。

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