チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年1月13日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 2009年も押し詰まった12月27日、鳩山首相はインドを訪問し、3日間という短時間に盛りだくさんの日程をこなして見せた。

幸夫人の「サリー・コスプレ」に注目する
日本を尻目に……

 シン首相とのトップ会談、08年ムンバイで発生した連続テロの犠牲者追悼のほか、28万円自動車発売で一躍日本での知名度を高めた「タタ」の総帥ラタン・タタ会長をはじめとするインド財界人との個別懇談や会合、さらには、国内では未だコンセンサスを得られていない「温室効果ガス25%削減ぶち上げ」への箔付けを狙ってか、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の議長で、アル・ゴア元米副大統領とともにノーベル平和賞を受賞したラジェンドラ・パチャウリ氏との会談も行なった。

 しかし、首相のインドでの「奮闘」も虚し、との感がある。というのも、今回の首相のインド訪問の報に接した巷の日本人の印象に最も深く残っているのは、鳩山夫人による「深紅のサリー・コスプレ」の映像であったかもしれないからだ。それほどまでに、とくに民放テレビメディアのこのインド訪問の取り上げ方はお粗末であった。

 今回の首相インド訪問の最大の成果といえば、日印両国が海上輸送の安全など安全保障分野をめぐる包括的な協力について合意したことである。この合意は、麻生自民党政権時代に署名した「日印安保共同宣言」を引き継ぎ、具体措置である「行動計画」を取り決めたのだが、わが国がこうした安全保障協力で合意したのは、アメリカを除けば、オーストラリアに次いで二国目である。

 それほどまでに、インドとの安全保障の協力は重要なのだ。中東の原油が生命線の一つである日本にとって、原油の輸送路であるシーレーン確保のためには、インド洋での安全確保ならびにインドの協力を得ることが不可欠である。

 年末のあわただしさの中であったとはいえ、あの首相のインド訪問に、私たちの生命線の如何が託されていたとの認識を、一体どれほどの日本人が持ち得ていたことか?

 虚しさはさらに募る。日本メディアが総理夫人のサリー姿を伝えるのに熱心だった同じ時、お隣中国の「官製メディア」のほうが、むしろ当事者以上に熱心に日印協力強化の問題を分析し伝えていたという、笑えない状況が起きていたからである。

「日印友好」「インド洋」に敏感に反応する中国

 かねてから筆者は拙著等で、日本はインドとの連携を強めるべきと主張してきた。理由は明白。軍拡に余念ない中国へのけん制のためだ。同じ考えから、小泉、安倍、麻生といった自民党政権は、アメリカと緊密な関係を強調しつつ、自由や民主主義という価値観を共有するインドへの支援を積極的に行なうことで中国をけん制しようとしてきた。

 この狙いが的を射ていたことは、「日印接近」の機会あるごとに、過敏とも思われる論調でそれを伝える中国メディアの反応が教えてくれている。

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