BIG DEAL

2016年11月15日

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『世界に通じる子供の育て方』という書籍がある。子供を持つ親として、思わず手に取りたくなるタイトルだ。著者は浜田満さん。Amazing Sports Lab Japan社の代表取締役で、少年サッカーの世界では知らぬ人はないほどの方である。FCバルセロナのサッカースクールの主催、U12ジュニアサッカーワールドチャレンジ大会のプロデュースなどに加えて、サッカーに関わる様々なコンサルティングを行っている。また浜田さんは、カンテラと呼ばれるFCバルセロナの下部組織に日本人で初めて合格し、11月5日にJリーグ最年少デビューを果たした久保建英くん(FC東京)をサポートしていることでも知られている。私の息子もサッカーをやっており、試合になると最前列に陣取って大声で応援する親バカぶりを発揮しているのであるが、機会があって浜田さんの講演会に参加することができた。

正しい努力とは何か?

レアルマドリードのエース、クリスティアーノ・ロナウド(GettyImages)

 私が子供のころは、少年スポーツと言えば野球であったが、今は子供のサッカー人口が飛躍的に増えた。その過程で技術的な底上げがなされ、本田や長友のように海外のサッカーリーグで活躍するプレーヤーも増えたし、ワールドカップへの出場も常態化してきた。実際、日本の少年サッカーの水準は、浜田さんによると12歳までは世界クラスなのだという。だが12歳を超えると途端に世界と差が開き、特に男子の場合は、ワールドカップに参加はできても優勝するには程遠い状況が続いている。「世界との差は、発育期のフィジカルの差だ」という説明がよく聞かれるが、浜田さんはこれをきっぱり否定する。

 「要は正しい努力をしていないのですよ」と。

 日本のサッカーの現場では、往々にして猛烈に努力することが求められる。求められる努力の量は半端ないのであるが、その「質」について語られることはあまりない。サッカーとは、「判断を伴った実行」が必要とされるスポーツである。だから判断基準のトレーニングが必要なのだと浜田さん。しかし日本では子供逹にサッカーのそのような本質を理解させず、ドリブルやリフティングなどのスキル習得に偏重する指導が行われている。

 これに対して、スペインなどサッカー先進国では、選手評価がスキルではなく「サッカーの理解度」で行われるそうだ。浜田さんによると、日本の少年逹のサッカーの理解度は、スペインのそれに比べて3学年ほど遅れているという。私が持っている別のスペイン式サッカー教本(注)では「サッカーとは、自分のチームが得点することを阻害する様々な要因に対し、それらをいかに除去するかというソリューションを個人・チームで見出す知的活動」とある。最初読んだ時は、サッカーが知的活動かと絶句したが、浜田さんの話を聞けば合点がいく。(注:『誰にでもわかるサッカー説明書』森亮太・坪井健太郎)

 また浜田さんは、日本人の特性として、「目標設定をして、それを達成するために、有限な時間の中で逆算して、今何をすべきかを自分で考えられない人が多い」とも述べている。確かに偏差値重視の教育の中で、「知っていること」や、それにより「テストで点数を取れること」が重視され、「考える」という訓練をしっかりやってこなかったと自分の受験時代を振り返ってもそう思う。いずれにしても、サッカーの本質を教える教育の欠如と、その結果としての理解度の低さ、やるべきことを自ら考えて実践する能力の差によって、欧州でのサッカーがポジション別の練習を始める13歳以降、世界との差が顕在化してしまうのだ、と浜田さんは言う。

 「皆さんは中学以来、英語を勉強してきましたよね? 努力されたはずです。そして時間とお金も相当かけたはずですが、英語がモノになっている人がここにどれだけいらっしゃいますか?その努力は正しかったのでしょうか? お子さんのサッカーを皆さんの英語のようにして良いですか?」この問いに、講演会場が凍りついたことは言うまでもない。

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