海野素央のアイ・ラブ・USA

2016年11月18日

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海野素央 (うんの・もとお)

明治大学教授、心理学博士

明治大学政治経済学部教授。心理学博士。アメリカン大学(ワシントンDC)異文化マネジメント客員研究員(08~10年、12~13年)。専門は異文化間コミュニケーション論、異文化マネジメント論。08年及び12年の米大統領選挙においてオバマ陣営にボランティアの草の根運動員として参加。16年米大統領選挙ではクリントン陣営に入る。著書に「オバマ再選の内幕―オバマ陣営を支えた日本人が語る選挙戦略」(同友館)など多数。

 今回のテーマは「クリントンの敗因とその意味」です。民主党ヒラリー・クリントン前国務長官は、大口献金者との電話会議で米連邦捜査局(FBI)が投開票日の11日前に公表した私用メール捜査再開がクリントン陣営の勢いを止めたと述べました。本稿では、現場の視点からクリントン敗因を探り、それが米国社会及び世界にどのような影響を与えるのかについて考察します。

敗北を宣言するクリントン候補(写真:代表撮影/UPI/アフロ)

クリントン敗北の真因

 どちらの候補に投票するべきか決めかねている「無党派ジレンマ層」がオクトーバーサプライズ(投開票日の1カ月前に起きる選挙結果に大きな影響を及ぼす驚くべき出来事)を重視するのか、戸別訪問でクリントン陣営の運動員と交わした最後の会話に価値を見出すのかが、両候補の勝敗を左右すると筆者はこれまで指摘してきました。結局、決めかねていた無党派ジレンマ層は、オクトーバーサプライズの影響を受けてトランプ支持に動いたのです。

 10月に入ると有権者の目が共和党ドナルド・トランプ候補のわいせつ発言及び女性スキャンダルに向きましたが、投開票日直前のFBI捜査再開の公表によりクリントン候補のメール問題に関心が戻ってしまったのです。エディソン・リサーチによる出口調査によれば、投開票日があった11月6日の週に決めかねていた有権者の47%がトランプ候補、42%がクリントン候補に投票をしています。

 ただ、現場の立場から述べますとクリントン敗北の真因はアフリカ系、ヒスパニック系及び若者の熱意の欠如と言えます。2008年米大統領選挙で筆者は研究の一環としてオバマ陣営に入り、南部バージニア州で戸別訪問を実施しました。ことにアフリカ系並びに若者から、米国史上初の黒人大統領を誕生させようという熱意が伝わってきました。それとは対照的に、今回の大統領選挙では彼らの中にはクリントン候補を米国史上初の女性大統領にするという強い決意がなかったのです。

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