WEDGE REPORT

2010年4月5日

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 民主党が昨年の衆院選マニフェストの目玉の一つとして打ち出したコメ農家への「戸別所得補償制度」が、4月1日にモデル事業(23年度から対象作物を広げ本格実施)として始まった。「子ども手当」や「高校授業料無償化」のほうがより身近な政策に感じられるかもしれないが、じつはこの制度には、22年度だけで5,618億円もの血税が投じられることになっている。そうなると、この政策が何を目指しているのか正しく理解したくなる読者は少なくないだろう。この政策の背後にある民主党の狙いを探り、夏の参院選の投票先を考える参考にしていただければ幸いである。

 3月30日、政府は今後10年間の農政の在り方を示す農業基本計画を閣議決定し、現在41%の食料自給率を2020年度までに50%に引き上げる目標を設定した。その自給率向上の主力政策として民主党が掲げているのが、「農業者戸別所得補償制度」と「水田利活用向上事業」である。

 「農業者戸別所得補償制度」の内容(※下表参照)は、減反に参加するすべてのコメ販売農家に対して補助金を定額支給(10a当り年間1.5万円,平均的なコメ作付面積1.2haの場合、年間18万円程度)し、さらに、「当年の販売価格」が「標準的な販売価格」(過去3年の平均)を下回る場合には、下落分を政府が補填するという2つの補助金を組み合わせたものだ。(減反参加を支給要件としているのは、増産によって米価が下落し、政府の財政支出がさらに増えるのを防ぐ目的がある)

 また、「水田利活用向上事業」は、自給率向上に貢献する作物(麦、大豆、飼料米、米粉など)を生産するインセンティブ(10a当り年間2万円~8万円支給)を農家に与えるものである。

 自民党時代は、減反に参加し、さらに転作も行うことを条件に補助金が支給されていたが、民主党の戸別所得補償制度では、減反に参加すればコメの作付けに対して補助金がもらえ、また減反に参加しなくとも、自給率向上に貢献する作物を生産すれば補助金がもらえる仕組になっている。つまり、「アメ」ばかりをぶら下げた政策といえる。

 そもそも米価の下落は、国内のコメ離れによる需要低下が大きな原因と言われる。自民党政権時代も減反政策の推進により生産量を減らしてきたものの、それ以上に消費量が落ち込んだため、米価は下がり続けてきた(※下のグラフ参照)。20年度のコメ60kg(1俵)当りの取引価格は15,159円だが、対する農家の生産コストは16,497円である。取引価格には農協の手数料が含まれるため、農家の手取り収入はこれよりさらに少ない。販売価格が下がれば、当然その分の生産コストを下げる努力をしなければならないはずだが、民主党の戸別所得補償制度は、それを鈍らせる。

コメの生産量及び消費量と米価の推移
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