2024年4月25日(木)

WEDGE REPORT

2016年12月30日

カストロはこうしてベネズエラを植民地化した

 2009年末ころからだろうか。ベネズエラ第一の港プエルト・カベ―ジョ港近辺にある私の定宿のクンボート・ホテルはキューバ人たちで一杯になった。予約がとれないこともしばしばであった。彼らの半数は港に勤務し、半数は遠い昔日本の大企業が作った火力発電所の修理に来ているとされる者たちだった。

 レバノン系コカインカルテルの長マクレッド・ガルシアが支配していた港は、コロンビアで彼が逮捕された後、国営化され、私の知人の港オペレーションのトップだった民間人もパージされ、軍人が後釜に座り、その後キューバ人が管理職として入ってきた。それまでも最悪だった港の機能は一層失われた。

 一方、水力発電に頼るベネズエラは、当時エル・ニーニョの影響で降雨不足。度重なる停電を招いていた。2010年2月、その解決のために派遣されたキューバ人専門家集団の長は、カストロとともにキューバ革命を戦った英雄ラミロ・バルデスだった。キューバの諜報機関G2を作り、内務大臣にもなった政治家である。その当時は情報通信大臣であり、電力との接点は全くなかった。10%程度しか稼働率がない火力発電所は、まったく改善する予兆はなかった。

 ラミロ・バルデスの目的はまったく別だった。ベネズエラ人の身分証明書とパスポートを含めた出入国管理の新たなシステムを作ること。さらに、キューバとベネズエラを海底光ファイバーケーブルで結ぶプロジェクトの進展だった。

 ベネズエラは既存の一般回線は不安定でしばしば不通となり、電話会社の支払い遅延などから国際電話がかけられないこともある。キューバの通信状況はさらにひどいと言われる。クーデターなどの緊急事態時にキューバと相談できない。 

 光ファイバーケーブルは、計画よりも数年遅れて、チャべス死後の2013年初めには稼働した。アクセスできる人間は政府の上層部、政府系科学者などに限られているという。こうしてベネズエラ人の個人情報はキューバに筒抜けとなるとともに、他国の諜報機関に傍受されることなく、カストロ・キューバの指令がカラカスの大統領官邸に送られるようになった。


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