2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2010年4月23日

 「これは料金の実質的な値上げだ」、「政府はまたムダな道路を造ろうとしている」――。今月9日、前原誠司国土交通大臣が6月から始まる高速道路の新料金制度と、割引財源2.6兆円のうち1.4兆円を新たな道路整備に回す政府案を発表すると、多くのメディアは冒頭のように批判しました。政府も改めて議論する必要があると表明するなど、混乱が起きています。
  しかし、民営化されたはずの高速道路の料金や建設計画を、なぜいまだに国が決めようとしているのか? 最近の報道では見落とされがちなこの疑問について、小泉改革による道路公団民営化の際、民営化推進委員会の事務局次長を務めた片桐幸雄氏に伺いました。(編集部)

──今回の報道を目にしていると、そもそも民営化されたはずの高速道路の料金や建設計画を、なぜ相変わらず国が決めているのだろうという疑問が浮かびます。

片桐氏:民営化というのは意思決定、つまりどこに投資して、どういう料金設定をしてお客さんに使っていただくか、どういうサービスをいくらの対価で提供するかを自分で決めるってことです。民営化すれば、採算性のない道路に投資したら資金調達ができなくなるし、採算性を無視した料金設定をすれば赤字になって経営責任が問われることになるから、無茶できないわけです。

 それが本来の民営化だと思うんですが、今は独立行政法人たる日本高速道路保有・債務返済機構(以下、機構)ができて、高速道路会社(以下、会社)は道路が完成すると同時に、機構に債権も債務も全部渡してしまうから、会社は経営責任を問われない*。その代わり、料金も建設計画も国の言いなりになってしまうわけです。

 *道路公団民営化で採用された「上下分離方式」によって、高速道路会社は、高速道路の建設、管理運営、料金徴収だけを行えば済む仕組みになっている。道路を建設することによって発生する債務はすべて独立行政法人である機構が引き取り、機構の責任で返済が行われる。つまり、民営化された高速道路会社は、高速道路の建設費用の債務返済に責任を持たなくてよいため、採算性を考える必要がない。

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