木原実・取締役営業本部長によると「ネット住宅の利益率は一般注文住宅に比べ、売上総利益ベースでは3%ほど下回るが営業利益ベースでは逆に2%ほど上回る」。販売管理費が少ない分、安い販売価格でも利益が出るわけだ。住宅不況が長引き体力を失った住宅メーカーにとって、完全規格商品の定価販売はメリットが大きい。近年パナホーム、ダイワハウスなどネット住宅への参入が相次いでいるのはその証左だろう。
S×Lも経営は厳しい。連結最終赤字に転落した01年度以降、赤字と黒字を行ったり来たり。そんななかでも着実に実績を積み上げ、08年度には全戸建販売の16%にまで達したネット住宅への期待は大きい。09年度は360棟を見込み、3年後には年間1000棟まで引き上げる計画だ。そのために、昨年10月にはプラン数を557まで増やし、シミュレーション機能も大幅に増強した(右図)。間口を広げるための代理店制度も拡充したところだ。
当然課題はある。木原氏によると、「ネット住宅は、“最後の一押し”が弱い」。信頼関係を構築できている営業マンは「このプランが最善です」と顧客の背中を押すことができる。ネット上のシミュレーションだけで顧客の迷いが断ち切れるわけではない。
「リビングの隣は和室がいいのか、2階にトイレが必要か、といった内容は営業マンがお客様の属性やライフスタイルを十分に聞いた上でアドバイスをしている。こういうコンサルティング機能をいずれ実装したい。また、購入予定者が気軽に相談できるコミュニティを、先輩オーナーや工務店も含めた形でつくれないか、こちらは来年度にもリリースできないか検討しているところ」(木原氏)という。
「金に色をつける」 ネット金融
「私は、シュンペーターの言葉『銀行家はイノベーションの遂行を可能にし、国民経済の名においてイノベーションを遂行する全権能を与えるのである』が好きです。起業家を探し育てるのが本来の銀行家。しかし、都市銀行に10年勤めて、これは銀行屋に過ぎない、と。
銀行マンがよく言う『お金に色はつかない』という言葉が嫌いです。金を右から左に回すのは誰でもできる。お金に色をつける、本来のバンカーの仕事がしたい」
こう語る妹尾賢俊氏が社長を務めるマネオ(maneo)が提供するのは、個人間の融資をネットで仲介する、ソーシャルレンディングと呼ばれるサービスだ。05年から英ゾーパ、06年から米プロスパーが事業を始めたのを見た妹尾氏は、三菱東京UFJ銀行在職中の06年8月から、後に共同創業者となるシー・ジェフリー チャー氏と勉強会を始め、07年4月に会社を設立。08年10月からサービスを開始した。
具体的な仕組みは図を見てほしい。まず、借り手が借り入れの目的や、金額・金利などの条件をマネオのサイト上に提示する。貸し手は、サイト上で借り手に質問することもでき、貸してもよいと判断すれば、上限20万円の範囲内で入札する。入札が多ければ、借り手の想定より低い金利で決着することもある。