最近、地下鉄の駅構内で「東京メトロ×コロプラ=位置ゲー」というポスターをよく目にする。東京メトロでは、4月17日から「東京再発見! 食べつくし位置ゲーの旅」というタイアップキャンペーンを実施している。内容は、話題の位置ゲーム「コロプラ(コロニーな生活☆PLUS)」内で行われるキャンペーンイベント。コロプラユーザーが東京メトロの各駅で位置情報を登録すると、バーチャルなアイテムを取得することができる仕組みだ。さらに、専用の1日乗車券を購入すると、そこに印字された番号を利用してイベントを進めることができる。乗車券は発売から2日間で4000枚を売り上げ、「このようなタイアップイベントは初めてだが、好調な出だしと言えるだろう」(東京メトロ広報部)と、GWへの期待が膨らむスタートとなった。
コロプラは会員100万人を突破し、大ヒットを記録している。元来、ゲームというのは当然バーチャルな世界の中ですべてが完結するものだが、コロプラは「移動」を伴うことによって、現実の世界に様々な影響を及ぼしている。上記の東京メトロの例の他にも、旅行会社がツアーを企画したり、提携店の売り上げが急増したりということが起きているのだ。
他にも、電子版スタンプラリーとも言える「ケータイ国盗り合戦」やiPhoneのアプリケーション「セカイカメラ」が地域活性化に貢献するなど、ネットとリアルが結びついた例はたくさんある。これらは進化するIT技術によってもたらされたものに間違いはないが、実はその根本には「ユーザーの共感を呼び起こす」「消費者目線で商品を提供する」という、ビジネスの原点が見え隠れしている。
さらに、この流れは「リアルなやりとり」「顔の見える営業」が重要視されてきた世界にも広がりつつある。「“インターネット上で”住宅を購入する、融資を希望する、生命保険に加入する…。」抵抗を感じる方も少なくないかもしれないが、その本質を知れば、ネットとリアルの関係に商機を見出すことができるだろう。
営業マンに会わずに住宅を買う
「ネット住宅」をご存じだろうか。外観デザインの選択から、内外装や設備のシミュレーション、概算見積もりの算出まで、建物(上屋)の検討プロセスのほとんどをインターネット上で実現することで、間接コストを大幅に圧縮した住宅商品のことだ。2001~09年の間に2450棟を建設したエス・バイ・エル(S×L)は、この分野のパイオニアである。
モデルハウスはなく、顧客はネット上での検討に、各種イベントや先輩オーナーの住宅見学会への参加を組み合わせて契約に至る。営業マンが訪問することは一度もなく、メールや電話で商談は完結する。抵抗感を感じる読者は少なくないかもしれないが、購入顧客の85%は「抵抗や不具合はなく満足」とアンケートに答えているという。
一生でもっとも高い買い物と言われる住宅。顧客は住宅展示場で各社のモデルを見比べ、気に入ったメーカーの営業マンと二人三脚でプランを詰めていくのが普通だ。顧客を逃がすまいと設計変更や値引きが当たり前になり、逆に元を取るために不必要に高価なオプションを勧める。そんな不透明でムダの多い業界慣行があったことも事実である。営業マンを多く抱え、展示場を全国に展開し、テレビCMを打つ─いつしかこんなビジネスモデルが一般的になったが、高コストであったのは間違いない。