2024年4月21日(日)

Wedge REPORT

2010年4月27日

 結婚資金、出産費用、留学費用、奨学金返済……。10年3月末で成約件数234件、総額1億8689万円にのぼるローンの内容を見ると、実に個人的なライフイベントが多い。ロットの小さい個人向け融資は割に合わないと敬遠し、やっても担保がとれて画一的に設計できる住宅ローンくらい、という銀行のスタイルではできない融資だ。

 さらに妹尾氏は独立開業資金に目を向けている。亀井静香郵政・金融担当相による返済猶予法のために、中小企業向け融資の現場では、既存案件の条件変更等に追われ、新規開業資金にリソースが割かれていないと言われている。

 さいたまアリーナでクレープ店「モミアンドトイズ」を開いた中村路子さんは昨年3月、開業資金の一部180万円をmaneoから調達。貸し手からは、他の調達手段や起業への決意を尋ねられ、中村氏は「厳しい質問は自らへの戒めとして有難かった」と振り返る。また、子ども3人を抱えるシングルマザーという事情も伝えたところ、「応援したい」「頑張って」と励まされ、開店後も「お店を教えて」「ぜひ行きたい」との共感の声が届けられているという。

 maneoは現在、居酒屋チェーンと組み、フランチャイズ店長として独立開業を目指す店員に対するスキームの設計を進めている。このスキームでは、借り手に独立開業への思いを貸し手へ伝えてもらい、融資を実行した貸し手には食事優待券を配って開業後も関心をもってもらうといった取り組みも検討している。「匿名性を担保しつつ、借り手、貸し手の思いを、融資後にわたってリアルに交わらせることができれば、もっとお金に色をつける場を提供することができる」と妹尾氏は語る。

原点をみつめる
ネット生保

 ライフネット生命保険が快進撃を続けている。ネット専業の独立生保として08年5月に開業して以来、保有件数は毎月10%程度の伸びで増え、10年3月末には2万3506件に達した。年換算保険料も10億円を突破した。

 日本生命保険で要職を務め、「生保を知り尽くした人」と言われた還暦過ぎの出口治明社長と、30代の岩瀬大輔副社長の「凸凹コンビ」で創業されたライフネットは、旧態依然とした生保業界に大きな風穴を開けている。その成功の鍵は「マニフェストの徹底にある」と出口氏は語る。そのシンプルで愚直な経営姿勢がクチコミで広く伝播している。

 『「生命保険はむずかしい」そう言われる時代は、もう、終りにさせたい』と題されたマニフェストの内容をいくつか紹介しよう。

◯私たちは、生命保険を原点に戻す。生命保険は生活者の「ころばぬ先の杖が欲しい」という希望から生れてきたもので、生命保険会社という、制度が先にあったのではないという、原点に。
◯お客さまが、自分に合った商品を自分の判断で、納得して買えるようにしたい。そのための情報はすべて開示する。例えば、私たちの最初の商品は、生命保険が生れた時代の商品のように、内容がシンプルで、コストも安く作られている。そのかわり、配当や解約返戻金や特約はない。保険料の支払いも月払いのみである。このような保険の内容も、つつみ隠さず知ってもらう。

 マニフェストに貫かれているのは、徹底的な顧客目線である。これは、既存生保に対する強烈なアンチテーゼといってもいい。25万人もの営業職員(昔の表現で言えばセールスレディー)を抱え込む、高コストのビジネスモデル。複雑な特約商品から発生した大量の不払い事件。そういった業界のあり様への反骨精神は、開業後半年で踏み切った「保険料原価の全面開示」に特徴的に現れている。


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