2024年4月15日(月)

Wedge REPORT

2010年4月27日

 ライフネットの弱みは知名度の低さだ。テレビCMでも大量に打ちたくなるところだが、それではその分保険料が高くなり、マニフェストに反してしまう。「一番安い保険料と知名度向上。永遠に解けない方程式を解いているようなもの」と笑う出口氏が重視しているのがクチコミだ。

 出口氏と岩瀬氏は、この1年間で150回もの講演会を行っている。相手は学生サークル、保険代理店、IT系の起業家集団とさまざま。たった10人でも誘われればどこへでも行くのがモットーだ。「明治時代に初めて生命保険を売った明治生命は、各地の村長に手紙を書いた。宴会を開くから村民を集めてくれと。そこで生命保険とは何かを丁寧に説明した。これと同じことをやるということ」と出口氏は言う。

 ライフネットはこれまで契約者と経営陣の語らいの場「契約者のつどい」を既に7回開くなど、顧客の声を大切にしている。2月に出した新商品「働く人への保険」は、就業不能に陥った場合に保険金が支払われるというものだが、これをつくったのは単身者や共働き夫婦から「寝たきりになった場合の保険はないのか」という声が多く寄せられたからだという。

 このようなニーズは業界では以前から認知されていたが、既存生保はどこも手をつけていない。「営業職員が理解しにくい新商品の展開は、教育、周知に手間とコストがかかる。どこかが出して広まってから乗っかればいいというのが大手の判断だろう」(出口氏)というから、既存生保がいかに顧客目線に立っていないかがわかるだろう。ライフネットの取り組みは、ネットの強みを最大限に活かした「生保の原点回帰」であるといえるだろう。

「顔の見える○○」
は本当か

 以上の住宅、金融、生保業界、いずれも営業マン(セールスレディー)や銀行マンが足で稼ぐ「顔の見える営業(金融)」が大事とされてきた商売だ。

 しかし、これらのビジネスは本当に顧客の「顔」が見えていたのだろうか。

 いつのまにか人員を大量に抱え、その人件費を賄うために、価格が高くなるよう商品設計し、それを大量に裁くためにテレビCMなどのマスコミュニケーションに頼る、という悪循環に陥っていただけではなかったのか。この構図は高度経済成長時代には顕在化せずに済んだ。バブルが崩壊し、デフレが進行するなかで、消費者の価格に対する目がシビアになると、そのビジネスモデルの維持は難しくなってきた。

 IT技術の進展は、間接コストの削減と、流通網の改革をもたらした。ITとネットを使いこなせば、付加価値のわりに安い商品を直接消費者に届けることができる。この構図にいち早く気づき、さらに業界の旧弊にとらわれることをよしとしない革命児が、住宅、金融、生保、各業界において成功を収めつつあるということではないか。

 高コスト体質に加え、売り手の意識にも問題はなかったか。成熟社会に入り、消費者が多様化したと言われて久しい。果たして、それに合わせて、売り手の意識は多様化できていたか。リアルのビジネスに消費者への「共感」が足りなかったのではないだろうか。

 ネット住宅のS×Lと、ネット金融のmaneoが、今後の課題として、コミュニティの構築による、ユーザー間の「共感」の醸成を共通して挙げているのは興味深いところだろう。
ネット生保のライフネットも、「共感」の重要性に対する意識は同様だが、手法が異なる。

 「共感は、マニフェストの徹底によってのみ生まれる。支払いを受けた人と、契約を検討している人をネットワークしたらいいのではないかという誘惑に駆られないことはない。しかし、それはお客様に見透かされるのではないか。本業を研ぎ澄まし、共感が自然に生まれるのを待つというのが王道だと思う」。そう語る出口氏は一つ実例を挙げてくれた。それが、twitterの事例である。(右図参照)

 無駄なコストや手間をなくし、人間関係や社会をドライにするツールと受け止められてきたITやネットが、「共感」をつくり出すツールとして注目されているのは間違いない。この皮肉とも思える事象に、今後の商機が潜んでいる。

                           *WEDGE5月号本誌では、記事冒頭のコロプラをはじめとする携帯電話ゲームなどにも詳しく触れています。

◆ 「WEDGE」2010年5月号

 

 


 

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