2024年12月24日(火)

普天間問題特別鼎談

2010年4月30日

前篇からの続き>

2.

マーブル:普天間問題をいったん脇に置いて、米日関係全体の状況について議論したいと思います。フィネガン氏は最近、"Managing Unmet Expectations"という報告を出された。ローレスさん、トマスさんのお2人は、シニア・アドバイザーという肩書きでこのリポートに参画されました。題名が言う「満たされなかった期待」とは何ですか。

フィネガン:うんと簡単に言ってしまうと、米国側の期待は、日本に同盟のため、もっといろいろやってほしいというものです。

 日本側は米国に、同盟上の約束をすべて満たしてほしいと思っている。そして双方が抱く期待は冷戦後、とりわけ911の後に、次第次第に深まってきました。

 同盟に対する米国の立場を要約すると、日本防衛に向けた実戦運用能力を、もっと備えるべきだということになります。事は日本の防衛ですから、そこには、日本自身が主導的役割を果たしていくということが含まれます。

 加えて米国サイドには、地域や広く世界で安全保障上の危機が発生した場合に役立つように、同盟は能力を高めるべきだという期待にもいよいよ強いものがある。要するに、双方が互いにアクションを起こすことによって、米日にとって重要な共通の国際的利益をもっとよく守ることができるよう、同盟は能力をつけるべきだと米国は信じているのです。

 他方日本は、米側に同盟上の約束――とりわけ拡大抑止力を維持する約束を、十全に満たしてほしいと思っています。ところがこれと同時に、米国が世界的な核拡散防止の努力で先頭に立ち、北朝鮮の非核化でもリードしてほしいという期待ももっている。また、自衛隊戦力近代化においても、米国が日本を支援するのをあてにしている。

 つまり双方とも、他方に対してそれなりの理由がある期待をもっている。しかしまた、われわれが報告書で記したように、まさしくその期待が満たされていないということについて、お互い根拠のある懸念をもっているわけです。

マーブル:それではその期待を満たそうとするなら、同盟はよい方向に強化されることになるのでしょうか。

ジム・トマス:その問いに対してイエスと答えるには、前提があります。いろいろあったが結果として同盟は実戦運用上も、戦略的にもより良いものとなったと言えるなら、答はイエスです。互いの期待を満たそうとなんとか努力することは、同盟の強化につながったと言える。

 しかし同盟がいかなる実態か今日の姿を見てみると、双方が抱く期待を満たすためどんな道筋をとるべきなのか、何も見えません。ということは、米国と日本は、戦略面でも運用面でも、むしろ距離を大きくしていくということの方が、よりありそうなことと思えます。

 そもそも同盟には、大きな構造上の欠陥がある。例えば、指揮系統を統合する仕組みが存在しません。危機対応プランも、双方で統合し、十分しっかりしたものとしておかなくてはならないのに、それもない。


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