中国の不動産バブルは弾けるか

バブル期というより70年頃の日本に近い


中島厚志 (なかじま・あつし)  経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

中島厚志が読み解く「激動の経済」

混迷の度合いが増す一方の経済情勢。一歩先すら見渡せないこの時代を生き抜くためには、情報の感度、取捨選択能力、読解力が問われます。テレビ東京系「ワールド・ビジネス・サテライト」のコメンテータでもお馴染みでした、中島厚志氏が「激動の経済」を読み解きます。

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中国経済は高成長を続けている。中国の今年第1四半期のGDP成長率11.9%(前年同期比)や上海万博の開幕を見ても、中国では内需中心に少し過熱感があるようにすら見受けられる。この中で、住宅価格も高騰しており、日本の1980年代後半の不動産バブル期に似ているとの見方も出ている。さいわい、中国政府は住宅ローンに関する規制を強化するなど対応に乗り出しており、不動産バブル的な状況は当面やや沈静化する可能性がある。しかし、楽観は許されない。

バブル期の日本経済との類似点

 80年代後半の日本では、不動産価格と株価が急騰する金融バブルが発生した。そして、この金融バブルが崩壊すると、不動産取引に巨額の融資を行った金融機関や過大な債務を抱えた企業が不良債権処理に苦しむこととなり、日本は「失われた10年」とも言われる長期間の経済停滞に陥った。

 中国の不動産住宅動向が日本の80年代後半の不動産バブル期に類似しているとの見方の背景には、今後の展開次第では日本のバブル崩壊と「失われた10年」のような経済危機を招くのではないかとの危惧がある。確かに、80年代後半の日本経済と現在の中国経済とを比べると幾つもの類似点がある。

 ひとつは、高成長しているにもかかわらず金融緩和策が継続されていることだ。当時、日本ではプラザ合意後の円高によるデフレ圧力や景気悪化懸念に対して積極的な金融緩和策が採られた。しかし、事前の危惧とは異なって大した不景気がなかった上に、国際的圧力を懸念して金融引き締めへの転換が遅れたことが金融バブルを加速させてしまった。

 現在の中国でも、金融危機後の輸出急減に伴う不景気への懸念が依然として存在しており、高成長にもかかわらず積極的な財政支出と緩和的な金融政策が継続されている。しかも、今年の全人代(全国人民代表者会議。日本の衆議院に相当)で中国政府は2010年8%程度の経済成長を活動目標として掲げており、雇用拡大などの要請から相応の高成長が最優先されている。

 もうひとつは、土地神話の存在だ。土地価格は長期的に見れば下がることはなく、不動産を保有して得することはあっても損はないとの思い込みが土地保有への執着を強くし、日本の土地バブルは加速してしまった。

 中国でも、これに類した意識がある。主要な地域では、近年の住宅価格の上昇が所得増を上回っていて、早く住宅取得しないとますます住宅が買いにくくなるとの気持ちは強い。また、過去住宅ローンで住宅を購入した人の多くが、その後の賃金上昇で返済負担が実質的に軽減されたことも、住宅保有を有利と考える背景となっている。さらに、金融商品がまだ十分には充実していない中で、住宅は有力な金融投資の対象となっており、自宅以外にも軒数の住宅を保有する富裕層が増えている。

日本経済との相違点

 もっとも、当時の日本と現在の中国では異なる点もある。ひとつは、中国では資産価格全般の高騰には至っていないことが挙げられる。数年前に高騰したとは言え、中国の株価は現在落ち着いた推移となっており、当時の日本のような株価の高騰は見られない。

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著者

中島厚志(なかじま・あつし)

経済産業研究所理事長

1952年生まれ。東京都出身。東大法学部卒業後、75年日本興業銀行(現みずほ銀行)入行。パリ興銀社長、日本興業銀行調査部長、みずほ総合研究所専務執行役員チーフエコノミストなどを経て現職。著書に『統計で読み解く日本経済 最強の成長戦略』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『日本の突破口―経済停滞の原因は国民意識にあり』『世界経済連鎖する危機―「金融危機」「世界同時不況」の行方を読む』(東洋経済新報社)など。

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