前向きに読み解く経済の裏側

2017年3月27日

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塚崎公義 (つかさき きみよし)

久留米大学商学部教授

1981年、東京大学法学部卒業後、日本興業銀行(現みずほ銀行)に入行。主に調査関連部署に勤務した後、2005年に銀行を退行して久留米大学へ。著書に『増補改訂 よくわかる日本経済入門』(朝日新書)、『老後破産しないためのお金の教科書』(東洋経済新報社)、『世界でいちばんやさしくて役立つ経済の教科書』(宝島社)、『なんだ、そうなのか! 経済入門』(日本経済新聞出版社)など多数。

甘やかすと甘える子になる

 高校を卒業し、新しく親元を離れて大学に進学した子も多いでしょう。仕送りは、子にとっては「命綱」です。でも、子が受け取った仕送りを浪費してしまい、翌月の仕送りの前借りを頼んで来たら、どうしますか? 母親は「今回だけ」と言って応じようとするかも知れませんが、父親は反対するかもしれません。

 なぜ、父親は反対するのでしょうか? 今回、前借りに応じると、次も前借りできるだろうと考えて、浪費癖が悪化しかねないからです。「前借りしなくても飢え死にしない」ことさえ確認できれば、厳しく対応し、子が「二度と浪費はしない」と改心することを期待するわけです。

(iStock)

 似たようなことは、保険の世界にもあります。保険に加入したことで、客に甘えが出ると困るのです。たとえば、盗難保険に加入した客が、鍵をかけずに外出するようになったら、保険会社は大損です。車両保険に加入したドライバーが車庫入れを乱暴に行なうようになったら、やはり保険会社は大損です。こうした客の行動を「モラル・ハザード」と呼びます。

 モラル・ハザードを防止するために、保険会社は様々な工夫をしています。たとえば、車両保険に「損害額のうち、2万円は運転者の負担、それを超える部分は保険会社の負担とする」という条項を入れておけば、運転手は2万円の負担を避けるために慎重に車庫入れするようになるはずです。

他人が甘えるようになるのはさらにマズイ

 大学4年生が就職も決まり、期末試験も終わり、あとは卒業式を待つだけ、という状態になると、人生最高の日々を過ごすことになりますが、中には単位不足で卒業できない学生もいるでしょう。そうした学生から「先生が単位を下されば卒業出来るのです。せっかく一流企業に内定をいただいているのに、卒業できなければ……」と泣きつかれる教授もいるでしょう。しかし、甘やかしてはなりません。なぜでしょうか?

 それは、「塚崎先生は、泣きつけば単位をくれる」という話が学生間で拡がるので、来年以降の4年生が勉強しなくなるからです。一人の学生が一流企業の就職内定を棒に振るのと、来年以降の4年生が一切勉強しなくなるのと、比較すれば、心を鬼にして学生を留年させるのは、仕方のないことでしょう。

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