高校野球選抜大会が終わり、プロ野球取材を再開すると、試合の長さを痛感する。甲子園は2時間前後で終わるのに、プロは軒並み3時間以上かかる。1日の広島-阪神戦など、両チームの四死球が合計28個に上る大乱戦となり、試合時間も5時間24分に達した。
そうした中、メジャーリーグでは今季から敬遠の四球が「申告制」となり、投手が実際に4球ボールを投げる必要がなくなった。守備側のチームが打者との勝負を避ける場合、監督が審判にそう伝えれば済む。MLBでは試合時間の短縮を喫緊の課題としており、3時間前後の試合時間を2時間半に縮めるのがロブ・マンフレッド・コミッショナーの悲願だという。敬遠の申告制度化もその一環だ。
早ければ来年、NPBもMLBのルール改正に倣うことになるだろう。2016年の平均試合時間は3時間10分(9回制のみ)で、15年に2時間56分として3時間台を切ることに成功したMLBに比べるとまだ長い。公式HPに連日平均試合時間をアップし、時短を呼びかけているNPBが「敬遠申告制」を導入するのも、それこそ〝時間の問題〟である。
試合時間短縮のためには、延長制度の改革も避けて通れない。プロ野球の公式戦は最大12回まで行われ、決着しなければ引き分けとなる。MLBでは勝負が決するまで何回まででも続けられ、延長20回を越え、2日間にまたがって行われたケースもある。勝負論としては正しいのかもしれないし、曖昧な決着を許さない大リーグの伝統のひとつとはいえ、これだけ時短が叫ばれるようになった現在、そろそろ見直される可能性もありそうだ。
その兆候を示したのが、今年行われたWBCのタイブレーク制度だ。延長戦自体はMLBと同じ無制限となっていた一方で、延長11回以降は点が入りやすくなるよう無死一・二塁でプレーが続けられた。2次ラウンドの日本-オランダが延長戦にもつれ込み、タイブレークに入った延長11回、中田翔(日本ハム)が2点タイムリーを打って勝利をものにしたケースは記憶に新しい。もしタイブレークがなければ、何回まで試合が続いていたか。
いま、このタイブレークを導入すべきだ、という議論が再燃しているのが高校野球界である。今年の選抜大会では、準々決勝進出をかけた2回戦、滋賀学園-福岡大大濠、健大高崎-福井工大福井がともに延長15回の末に引き分け再試合になるという史上初の事態が発生。福岡大大濠のエース三浦銀二は延長15回で196球、中1日置いての再試合でも9回を130球。ともにひとりで最後まで投げ抜き、8強進出を決めている。が、準々決勝の報徳学園戦では、さすがに八木啓伸監督が登板を回避。控え投手に外野手や捕手を注ぎ込みながら、報徳に大敗して甲子園を去った。