赤坂英一の野球丸

2017年3月29日

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 先週から甲子園で高校野球選抜大会の取材をしている。プロ野球の仕事が多い私にとってはほぼ25年ぶりで、いろいろと戸惑うことも多い中、改めてプロとは違うな、と実感させられたのが、高校野球独特の〝熱気〟だ。

 甲子園は準々決勝まで、1日に3~4試合行われる。第1試合のプレーボールは午前8時半~9時で、われわれ記者が試合前に取材をするには、朝7時過ぎまでに甲子園に到着していなければならない。私のように梅田のホテルに宿泊しているライターは、6時過ぎの阪神電車で甲子園へ向かうことになる。

早稲田実業清宮選手(日刊スポーツ/アフロ)

 この早朝の電車がすでに、高校野球ファンのお客さんでいっぱいなのだ。純粋に野球が好きな人もいれば、出場校の関係者や選手の家族や親戚もいて、車内で押し合いへし合いしながら、「きょうは勝てるかなあ」「負けてもいいから一発打って」などと祈るようにヒソヒソ話している声がする。甲子園の常連校や強豪校ではなく、たまたま選ばれた高校の関係者にとっては一生に一度、あるかないかの特別な行事だからか、彼らの声が非常に切実に聞こえるのだ。

 甲子園駅に着いたら、駅前の広場から球場の切符売り場まで長蛇の列、しかも一列だけでなく何列もできている。この時間から並んでいるファンにとってはいつもの光景だそうで、列の整理に当たっている駅員や球場係員の態度も馴れたものだが、四半世紀ぶりに甲子園を訪ねた私は目を白黒させるばかり。

 そうした光景の中、一見しただけで明らかに一般のファンではないな、とわかる体格のいい中高年の男たちが並んでいる。どう見ても野球経験者だ、どこの高校のOBだろう? とぼんやり眺めていたら、そのひとりから「赤坂さん、お久しぶりです!」と声をかけられた。現役選手だったころから知っている某球団のスカウトだ。甲子園の高校野球大会は、有望な高校球児が全国から集まる1年に2度の大イベント。高校や高野連の関係者にも挨拶できる貴重な機会とあり、どこの球団も大勢のスカウトを注ぎ込んでいる。それにしても、なぜファンと同じ列に並んでいるのか、旧知のスカウトがこう説明してくれた。

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