チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年6月9日

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 6月2日に当時の鳩山由紀夫首相は突如の退陣表明を行い、その一週間後の8日、菅直人内閣は正式に発足した。「親中」だと言われる民主党政権内でのこの「政変劇」に対し、当の中国政府と国内の専門家・世論はどう見ているのだろうか。

一斉に報じられた鳩山退陣報道

 6月2日の鳩山前首相の突然の退陣表明に対して、中国の国内の各メディアは直ちに速報し、翌日からも紙面を割いて目立つような報道を行った。中国の最大手検索サイト「百度」では、2日午後4時45分現在、ニュース検索ワードのトップが「鳩山 辞職」となったことからも、中国における「鳩山退陣報道」の密度と一般国民の関心度の高さが伺える。その最大の理由の一つはやはり、鳩山首相は中国では、「日中友好」にもっとも熱意のある日本の指導者であるとの評価を受けていたことにあろう。

 実際、中国外交部の馬朝旭報道官は2日、鳩山首相辞任に関する質問に答えて、「鳩山首相は在任期間中、日中関係を重視し、両国関係の健康的かつ安定した発展に尽力された。我々はこれを称賛したい」との評価を行い、環球網は鳩山首相が辞任を発表した当日から実施した「鳩山首相の辞任は日中関係に影響を及ぼすか?」とするネットアンケートでは、3日14時30分時点で51.8%のユーザーが「鳩山首相の在任中における日本の対中政策に満足している」と回答した。

中国のために「良い仕事」をしてくれた鳩山内閣

 その退陣する直前の5月末、日本国内における鳩山内閣の支持率が20%を切ったことは周知の通りだが、隣国の中国では逆に、最後の最後まで、半数以上の人々はその仕事ぶりに「満足」していたようである。どうやら鳩山内閣は、日本のためというよりも、むしろ中国のために「良い仕事」を残したようだ。

 この鳩山首相もやがて退陣する羽目となった。それが今後の日中関係に何らかの影響を及ぼすのではないかとの心配が中国側に大いにあるのでは、と思われるが、意外なことに、中国国内の専門家たちは一概に、「大きな影響がない」との冷静な見方を示している。

 中国政府の外交ブレーンとして知られる清華大学国際問題研究所の劉江永教授もその一人で、いくつかのメディアからの取材の中で「日中関係の大局に影響無し」との見方を繰り返しているが、もう一人の日中関係専門家で、日中両岸関係研究センター副主任の庚欣氏の楽観論も突出している。彼は6月2日、人民日報社所属の「環球時報」のネット版で論評を発表し、「鳩山退陣によって日本の対中政策が変わることない」と断言している。その理由として彼は挙げているのは、鳩山首相が退陣しても政権は依然として民主党政権であるから、対中政策の連続性が保たれることが期待できる。鳩山首相の後継者となるのは菅直人氏である可能性は大であるが、菅氏は鳩山氏以上に日中友好に熱心であるから、対中友好政策は継続されるだろう、との2点である。

菅首相就任で安堵と歓迎ムードが広がる中国

 このコメントからも分かるように、「親中」の鳩山前首相の退陣を惜しみながらも、中国側はやはり、同じ民主党政権から出る次期首相に「友好関係継続」の望みをかけているのである。そして、まさに中国の期待する通り、「鳩山氏以上に日中友好に熱心」な菅直人氏が次期首相に選出されると、中国国内では安堵と歓迎のムードが一気に広がった。

 菅氏が首相に選出された6月4日当日、中国の温家宝首相はさっそく菅直人新首相に祝電を送った。また、中国外務省の馬朝旭報道局長も同日、談話を発表し、「菅首相は中日関係発展を重視すると繰り返し表明してきた。我々はこれを称賛する」と述べ、就任早々の菅氏を褒め讃えた。

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