中東を読み解く

2017年4月7日

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 トランプ政権は6日、シリア政府の化学兵器使用に対する報復と懲罰のため、複数の巡航ミサイルで攻撃した。限定的な攻撃にとどまる見通しだが、断固とした対応で実行力を誇示すると同時に、“弱腰”と批判されたオバマ前大統領と同じ轍は踏まない、というトランプ大統領の強い思惑を反映するものだ。シリアとロシアが反発するのは必至だ。

会見するトランプ大統領(写真:AP/アフロ)

レーダー網や軍事施設、滑走路が標的

 トランプ大統領はシリア政策については2つの点を強調してきた。1つはオバマ前大統領が「アサド政権が化学兵器使用というレッドライン(超えてはならない一線)を越えれば、攻撃する」と公約していたのに、攻撃に踏み切らなかったことに対する非難。

 もう1つは「他国の政権を打倒するとかはやめる」などとして、アサド政権の追放を要求してきたオバマ前政権の政策の撤回だ。これは「米国第1主義」から米国の利益にならないようなことには関わらないというトランプ氏の持論を反映したものであり、シリアでは過激派組織「イスラム国」(IS)壊滅に集中し、シリアの内戦の行方や将来については、アサド政権を支援して軍事介入しているロシアに任せるとの宣言でもあった。

 今回の化学兵器使用については、アサド政権やロシアはシリア軍機がシリア北西部のイドリブ県の反体制派の武器庫を攻撃した際、貯蔵してあった化学兵器が拡散したと反論、化学兵器を使ったことを否定している。しかし米国やシリアの隣国のトルコはサリン・ガスを使ったのはアサド政権であると断定している。

 トランプ氏は当初、こうした事件はオバマ氏の“弱腰と優柔不断”が引き起こしたもの、という非難にとどまっていた。シリア政策の基本が「シリアに存在する政治的な現実」(大統領報道官)を重視し、アサド大統領を事実上容認する姿勢を維持するというものだったからだ。

 しかし赤ちゃんや子供を含む民間人約90人が死亡するという悲惨な現実が明るみに出て、国際的な非難が強まるにつれ、トランプ氏も「アサドに対する考えは大きく変わった」とアサド容認からの方針転換を示唆、「アサドには何かが起きるべきだ」と軍事的な報復措置を検討していることを仄めかした。

 こうした大統領の姿勢の転換を受け、国家安全保障担当のマクマスター補佐官、マティス国防長官、ティラーソン国務長官らが頻繁に協議、ペンタゴンの統合参謀本部がシリア攻撃計画の概要をまとめ、速やかな攻撃となった。

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