坂本幸雄の漂流ものづくり大国の治し方

2017年4月14日

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坂本幸雄 (さかもと・ゆきお)

サイノキングテクノロジーCEO、元エルピーダメモリ社長

日本体育大学卒業後、日本テキサス・インスツルメンツに入社し、93年副社長。神戸製鋼所、日本ファウンドリー社長を経て、02年エルピーダメモリ社長。現在サイノキングテクノロジーCEO。

 4月1日に東芝本体から分社化された東芝メモリの株式売却先についての議論が盛り上がっている。米ウエスタンデジタルが、東芝の分社化・売却を契約違反と主張し、株式取得に向けて独占交渉権を要求するなど、混沌としている。

 一連の動きをみていると、経営幹部と銀行は目先の資金を手に入れることや国の意向を忖度(そんたく)することばかり考えており、東芝メモリの将来を考えて売却先を検討しているのか不安になる。売却するにあたっては、検討すべき事項をすべて洗い出し、できる限り数値化して各社を評価し、売却先を決定すべきと考える。

(写真・ConstantinosZ/iStock/Thinkstock)

 具体的には、以下の項目等について考えるべきである。

・東芝の設備は古く、今後は莫大(ばくだい)投資が必要となる。耐えうる資金力があるか
・東芝メモリの技術を最大限引き出すことができる能力が経営陣や幹部にあるか
・DRAMとNEW MEMORYを(東芝メモリ最大の商品である)NANDと納品して欲しいというニーズが高まっており、これらをもっているか
・事業が重複していればいるほど買収企業の色に染められ、大量のリストラが断行される。東芝メモリがイニシアティブを握ることはできるか

 など、多くの項目を検討すべきであるが、加えて、買収企業がある国と日本との経済の結びつき、国民感情、政治関係なども定量的に考える必要がある。

 独占交渉権を要求しているウエスタンデジタルをこの項目に照らし合わせてみると、資金力に欠けるため、今後投資できる体力がなく、東芝メモリと事業が重複しているため、大量にリストラを行う可能性が高い。DRAMもNEW MEMORYもないため、将来性もあまりない、などの問題が浮かび上がる。私の考えとしては「最悪」の買収先である。台湾のTSMC、米国のアップル、マイクロン、中国のレノボなどが良いのではと考えている。

 米国一辺倒の考えも危険だ。エルピーダメモリをマイクロンに売却した私が言うのだからある程度の説得力があるのではないか(笑)。あくまで定量的にベストの選択肢を考えるべきである。

 また買収先を選定する議論には、エンジニアも入れるべきだ。情報流出、セキュリティの2点が懸念され、中国、台湾企業が対象外になりそうだが、NANDの3次元化をはじめ、技術はサムスンに後れを取っており、そのサムスンは中国で製造している。今の東芝から流出して困る技術というのはあまりない。

 セキュリティにしても、NANDだけに「書き込まれたデータを送る」という仕掛けをしていたとしても情報が流出することはない。NANDに加えてCPUにも同様の仕掛けがしてあって初めて成立する。CPUにおいて中国企業の存在感はまったくない。

 とにかく売却先については、定量的に評価して判断することが必要だ。日本企業は定性的に評価して定性的に判断する傾向にある。これではガソリンをかぶって火に飛び込んでいくようなものだ。

  
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