チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年6月24日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 先週19日、日本滞在中のチベットの指導者ダライ・ラマ14世法王が、記者会見で「日本の若者にエールを送った」と報じられた。法王は、「日本の若者が過剰なストレスと孤独感に悩み、自殺者が増えているとも聞いている」とした上で、「内に閉じこもるのではなく、世界の共通語である英語を学んで、アフリカやラテンアメリカなど外の世界へ飛び出し、それらの地の発展に貢献してほしい」と述べた。

「日本人よ、世界に飛び出せ」

 法王は一昨年の来日の折も、「日本人よ、世界に飛び出せ」と力説した。

 中国によるチベット侵略後、インドへの亡命を余儀なくされて半世紀。世界との弛まぬコミュニケーションによって、チベット問題を風化させない「闘い」を続けてきた法王の姿と重ね合わせて聞くと、この言葉には非常に説得力がある。

 一方、某大手メーカーの管理職(40代)から聞いた話に驚く。

 「今の20代、30代の社員は『海外駐在は嫌です』というのです。そのくせ、日本での毎日に「希望が持てない」ともいう」

 真面目に仕事はするが、冒険心やチャレンジ精神は希薄。かといって現状にも満足しているわけではなく、将来に漠然と不安を抱く日本の若者。そんな若者を見て、「日本人はどうなってしまったのか」と40代以上は唸るが、この問題を掘り下げるのが本稿の主旨ではない。

 そうした日本の若者とはあまりにも対照的に、ますます積極果敢に外国へ進出しているのが中国人である。先進国である日本や欧米のみならず、日常生活に相当の困難が伴うであろう途上国であっても、「チャンスあり」と見れば出ていくのが中国人だ。つい最近までイスラエルによる空爆が続いていた、パレスチナのガザにさえ、商店を開く中国人の姿があるという。

 以前、本コラムでアフリカへ出ていく中国資本と中国人(中国とアフリカの「不適切な関係」の行方)について書いた。同じく本稿では、中南米等の地域へ積極進出する「中国」と中国人の実情に触れたい。

日本の存在感が薄れる一方で中国は・・・・・・

 アフリカでの「戦果」に負けず劣らず、中南米での資源獲得競争においても、近年の中国の躍進ぶりは目覚ましい。この10年間で中国は、中南米において米国に次ぐ大投資国にのし上がり、その結果、アメリカとの鞘当てが激しさを増している。

 最近の例だけでも、2009年4月のNYタイムズが伝えたところでは、中国は、ブラジルの国営石油会社ペトロブラスに100億ドル、「反米の旗手」チャベス大統領率いるベネズエラに120億ドル、アルゼンチンに100億ドルを投資する大盤振る舞いを見せている。

 もとはといえばブッシュ政権時代に、アメリカがベネズエラやエクアドルと敵対したところへ中国が食い込んだことが「大躍進」のきっかけとなった。中南米の産油国にしてみれば、最大のお得意先であった米国向け輸出が減った分を、中国向け輸出で補う格好となったのだから、中国が救いの神となったともいえるのだ。 

 アメリカはオバマ政権となって、中南米との関係修復を打ち出し、大豆や鉄鉱石など補完的商品に関する長期供給交渉を行ってはいるもののやはり迫力負けの感は否めない。

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