世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年6月19日

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中国の大都市集中にも変化が現れ、中規模都市で不動産ブームが起きていると、5月20日付の英エコノミスト誌が報じています。要旨は以下の通りです。

安徽省の省都・合肥(iStock)

 何年も不動産不況に見舞われた安徽省蕪湖市に変化が生じている。2016年以降、同市の不動産価格は30%以上も急騰した。供給過剰は消え、住宅不足が新たな懸念となった。

 こうした不動産市況の目覚ましい改善は中国各地の中規模都市で起きている。蕪湖は「三番手」と言われる60余の都市の一つで、この言葉はこれらの都市の政治的重要性や規模(中国の基準で中規模は人口100~300万人)と共に、将来の展望に関する評価も指していた。専門家や投資家は巨大都市(北京、上海、深圳、広州)や二番手の大都市については楽観的だったが、三番手の都市については、産業基盤等が弱体で人材の流出が続くとして評価が低かった。

 しかし、2015年に大都市で始まった不動産市場の反騰がこれらの都市にも波及し、昨年、三番手の都市の住宅価格は平均7%も上昇し、大都市の市場が冷え込む中、今年も活況が続いている。
 もっとも、三番手の都市の浮上には投機が大きな役割を果たしている。ここ2年の資本規制の強化で資金が国内に滞留した。しかも、政府が景気刺激策として住宅購入者への抵当貸し付けの拡大を公営銀行に要請したため、2015年の株の暴落後は住宅が最も魅力的な資産になった。そこで、大都市の価格が急騰すると、投資家の関心は中規模都市に向かった。

 また、過熱する大都市の不動産市場を冷まそうとする政府の動きも同様の効果があった。昨年、安徽省の省都、合肥が住宅購入に制限を加え始めると、購入予定者は蕪湖等の他都市に押し寄せた。

 とはいえ、こうした地価上昇は中規模都市で一律に起きているのではなく、立地の良い所に集中している。とりわけ健闘しているのは、東部や南部の豊かな大都市の引力圏内の都市だが、インフラ整備のお陰で他の都市も健闘している。僻地だった蕪湖は高速鉄道が出来て上海との時間距離が3時間を切った。他方、中国北部、西部の住宅価格は5年前とほぼ変わらない。

 開発の波は中規模都市の経済も変えた。沿岸部の地価や賃金が上がると、企業は内陸部に移り始め、今や蕪湖には無数のロボティクス関連企業がある。人口の流れも変わりつつある。安徽省は中国各地への出稼ぎ労働者の主要供給源だが、一部出稼ぎ者のUターンで常住人口は2014年以降170万人増えた。

 同様の現象は、同じく出稼ぎ労働者の供給源の四川省や湖南省でも起きている。高齢が理由の帰郷もあるが、雇用機会の改善に惹かれて帰ってくる者も多い。蕪湖のある専門学校教師は、今やほとんどの学生が地元に残ると言う。

 中国政府はこの流れを推進したい。そこで人口2200万の上海は2040年までの人口増を100万人に抑える一方、中小の諸都市は外部者の流入を奨励する。

 都市の規模を制御するこの中国の政策は、最も生産的な都市に人為的制限を加えることで経済的損害をもたらす可能性がある。働いてきた大都市に永住できない出稼ぎ労働者に対しては非常に不公平だ。しかし、蕪湖などの三番手の都市に文句はない。こうした制限はこれらの都市の活性化に資するからだ。

出 典:Economist ‘China’s mid-sized cities are enjoying a property boom’(May 20, 2017)
http://www.economist.com/news/china/21722201-it-speculative-not-crazy-chinas-mid-sized-cities-are-enjoying-property-boom

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