文学的香気あふれる美術エッセイを小林秀雄に激賞された美術評論家・洲之内徹。学生時代に左翼運動で検挙され、戦時中は中国で諜報活動に従事する。戦後、小説に手を染め、芥川賞候補になったが、美術評論家に転じて以降、雑誌に発表した美術エッセイが鋭い批評眼と独特の文体で多くの読者を惹きつけた。洲之内徹が残した『絵のなかの散歩』『気まぐれ美術館』『帰りたい風景』などのエッセイ集はいまなお多くのファンを持っている。
洲之内徹の友人でもあった小説家・大原富枝の手になる本書は、絶版になって久しく入手困難な唯一の洲之内徹評伝の初の文庫化である。