荷風が晩年を過ごした市川で生まれ育った著者が、荷風の日記を辿りながら幼少期の回想を綴る。
永井荷風は晩年、千葉県市川市に居を移した。戦後まもなくの頃で、周囲にはのどかな田園風景が広がっていた。市川で育った著者は、荷風の日記に記された記述をたどりながら、幼少期の回想を綴る。 昼下りの銭湯で見かけた荷風の二の腕に彫られた「こう命」の刺青にまつわる秘話。「昭和」という時代のかけがえのない記憶が懐かしく、ときに哀切に紙面から立ちのぼる。荷風没後50年、記念刊行。
1937年東京生まれ。62年読売新聞社に入社、主に婦人部(現・生活情報部)で教育・子どもに関する問題を担当。97年定年退職。在職中、紙面に連載した記事をまとめた著作に、『六歳児前』『十歳児前後』『テレビっ子』『中学生』『高校生』(以上、文化出版局)、『ひとりっ子半家族』(共著、全国社会福祉協議会)、ほかに『幸田家のしつけ』(平凡社新書)などがある。