2024年4月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年7月7日

 トランプ政権が「航行の自由作戦」に遅まきながら踏み切ったことは歓迎すべきことです。作戦が行われたのはミスチーフ礁の海域ですが、国際法上、ミスチーフ礁は低潮高地(満潮時に水没する地形)とされ、領海を持ちません。したがって、駆逐艦デューイがその12カイリ内で転落救助訓練を行い、明確に「無害通航」でない態様で航行したことは、その海域が公海であるとの認識を表示する効果を持つことになります。

 オバマ政権も何回か「航行の自由作戦」を実施しましたが、どういう法的効果を狙ったものか定かでない印象がありました。今回の作戦はその目的とする法的効果は明確であり評価出来ますが、作戦のルート、態様、法的効果を公に説明しないことについてはオバマ政権の方針を踏襲しているようです。どうしてきちんと説明しないのか、判然としません。

 この社説は「更にやるべきことがある」と言いますが、他に良い知恵もありません。したがって「航行の自由作戦」は是非とも継続されなければなりません。スカボロー礁の軍事化に中国が乗り出す兆候があれば、これを阻止する必要があります。

 なお、社説の末段に紹介されているマティスの発言は、シャングリラ・ダイアローグにおける「70年前、アチソン国務長官は米国が主導する秩序の創造に立ち会ったと書いたが、NATO、TPP、パリ協定を巡る出来事を見ると、今や我々はその秩序の破壊に立ち会っているのではないか」という聴衆の質問に答えたもので、「アメリカ人は常に正しいことを行う――全ての選択肢をやってみた後であるが(The Americans will always do the right thing... after they've exhausted all the alternatives.)」というチャーチルの言葉に基づくものです。南シナ海でも「最後は米国に頼れる」ということであってほしいものです。

  
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