AIはシンギュラリティの夢を見るか?

2017年7月19日

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川手恭輔 (かわて・きょうすけ)

コンセプトデザイン・サイエンティスト

1990年代から、大手メーカーでインターネットサービスの企画・開発・運用を手がけ、自ら立案したグローバルなサービスを複数立ち上げた経験を持つ。その1つは、サービスのデザインでグッドデザイン賞を受賞した。コンピューターサイエンス関連の翻訳本も多数ある。

 畳み込みニューラルネットワークというAIは、クラウドや自動車などの、コンピューターのパワーを十分に使える環境で稼働するものでした。しかし、AIを動かすための省電力で小さいチップの登場や、AI自体を軽くする取り組みによって、Arsenalのような小さいデバイスでも稼働させることが可能になりました。ArsenalのAIは、お勧めの設定を提案するに止まっていますが、一眼レフカメラにAIを搭載すれば、より積極的な活用が可能になるはずです。

 AIの活用とは、人間が知能を使って行う作業を自動化することです。写真の撮影で、自動化すべき作業とは何でしょうか。ベテランのプロカメラマン、チャーリー・ハウスが、自身のキャリアを振り返って次のように言っています。

 「あまりにも長い間、素晴らしい写真は技術的に優れていなければならないと考えていました。しかし技術的側面は、芸術的側面あるいは構成的側面よりも重要ではないということに、私はようやく気がついたのです」

 ファインダーを覗きながら子供と会話したり、目の前の風景に感動してカメラを取り出したりしながら、シャッターを切る前に、残したいイメージを創ることが、写真の芸術的あるいは構成的な側面です。そのとき、カメラの設定を考えて操作することは、AIに任せて自動化すべき煩わしい作業です。

 絞り、シャッタースピード、ISO感度、ホワイトバランスといった言葉を、カメラのユーザーインターフェースから排除しなければなりません。それには、ファインダーを覗きながら、あるいは液晶画面のライブビューを見ながら、残したいイメージをAIに伝えるための新しいユーザーインターフェースを発明する必要があります。それは、一眼レフカメラの再発明です。

 しかし、その新しいカメラは、子供が成長する姿を残したい、海外旅行の思い出をたくさん残したいと思う、一般の人たちだけのものではありません。

 1976年にキヤノンが露出の設定を自動化したAE-1を発売して、一眼レフカメラの本格的な電子化が始まりました。1985年にミノルタ(2006年にカメラ事業をソニーに譲渡)が発売したオートフォーカス(AF)機能を備えたα-7000は、一般向けの一眼レフの市場を席巻しました。いまではAEやAFは、プロのカメラマン向けの一眼レフにも搭載されています。

 AIが技術的側面を担当できるようになっても、芸術的側面や構成的側面はプロフェッショナルの仕事として際立つはずです。チャーリー・ハウスの言葉は、彼の弟子のジェシー・ジェームス・アレンが作成した6分間の動画(英語)のなかで語られています。https://vimeo.com/220393249

  
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