一眼レフカメラは「素晴らしい写真」を撮ることができます。明るい交換ズームレンズ群、大きなイメージセンサー、高速シャッターなど、プロのカメラマンが一眼レフを使う理由は少なくありません。
一眼レフカメラには、絵文字が付いたダイヤルやボタン、そして液晶画面で設定できる機能が満載されています。しかし、初めての子供が生まれた、海外旅行に行くなどのきっかけで一眼レフを購入しても、せっかくの機能を使いこなすことができずに、「スマートフォンでもいいや」ということになってしまっている人も多いのではないかと思います。「一眼レフは素晴らしい写真を撮ることができる」という見解には、「プロのように使いこなすことができれば」という前提条件がつきます。
米国のベンチャー企業が発表したArsenal(アーセナル)という、一眼レフのアクセサリシューに取り付ける小さなデバイスは、AIによって、その前提条件を一眼レフから取り払おうとしています。そして、それは一眼レフカメラを再発明するヒントにもなりそうです。
プロのカメラマンは、目の前のシーンのいくつかの特徴に着目し、残したいイメージの写真を撮影するためのカメラの設定を考えます。そして、フレーミングをして、タイミングを見極めてシャッターを切ります。
フレーミングとは、目の前のシーンから、被写体をどのように切り取って画面を構成するかということです。ファインダーを覗いて、被写体をアップで撮るのか全体を撮るのか、ズームを使うのか自分が近寄る(遠ざかる)のか、さらに地面に屈んで下から撮るのか、あるいは上の方から覗き込むように撮るのかなどを決めます。動いている被写体をカメラで追いかけながら撮るのか、カメラを動かさずに撮るのかを考えることもあるでしょう。
残したいと思うイメージは、人の感性によって異なります。フレーミングやシャッターを切るタイミングも、撮る人の感性が頼りです。いろいろなシーンで、たくさんの写真を撮影をすることで「素晴らしい写真」を撮るための感性が磨かれて行きます。一眼レフカメラは、写真に表現できるイメージの幅が広いのです。しかしカメラの機能や、その設定の方法を理解して操作することは作業です。それらの作業が好きな人もいますが、子供が成長する姿を残したい、海外旅行の思い出をたくさん残したいと考えている人にとっては無用のことです。
デジタルカメラで撮影された写真には、Exif(イグジフ)と呼ばれる撮影情報が付属しています。インターネットで共有されるプロの写真でも、Exifが付属していれば、使用されたカメラやレンズと、露出モード、絞り、シャッタースピード、ISO感度、焦点距離、ホワイトバランスなど、その写真がどのような設定で撮影されたかを知ることができます。
しかし、プロのカメラマンが撮影した写真と、そのExifの情報とを見比べてみても、そのシーンのどこに着目して、それぞれの設定をしたのかはわからないでしょう。複数の要素から一つの設定を決めたり、一つの要素によって複数の設定を調整したり、あるいはカメラマン自身も明確に説明することができない、豊富な経験からくる勘のようなもので設定していることもあるかもしれません。