2024年4月19日(金)

オモロイ社長、オモロイ会社

2017年10月28日

CSRは儲からないと思いつつ

 2020年オリンピックが近づいている中で、ここ数カ月ほど前から、見聞きするようになってきた「SDGs(持続可能な開発目標)」。2030年までの残り10年と少し、そこを見据えて、国も動き出しています。他方で、多くの大手企業が行っている、CSR活動、私もサラリーマン時代、都心のゴミ拾い、海岸での清掃活動に駆り出された記憶があります。その行為そのものには意味意義を感じつつも、「企業として」事業と遠い、収益をもたらさないことに、本業との相関性のなさに疑問をもったものでした。

 ここ数年CSRからCSV(Creating Shared Value)へと企業も考え方を変えようとチャレンジを始めた会社も出だしましたが、まだまだな感じ、そもそも何をやれば良いのか? と行動を起こせていない企業も多いと思います。

 今回は、CSVの観点で、事業モデルが確立し、その概要が2015年にパリで開催されたCOP21にて経産省が発表していたり、また大手企業がノミネートされている中、国内初「SDGsビジネスアワード2017」で大賞を受賞したりと、この分野で注目を浴びつつあるフロムファーイースト代表の阪口竜也氏に話をうかがいました。

森本さん(左)と阪口さん

100年後を見据えて事業を大転換、決意させたものとは

 20年近く前、阪口さんは大学を卒業後、1年間だけ会社勤めをした後に、美容サロンの経営に参画、多店舗展開をしていく中で、COO的存在で大活躍、毎年200%以上の成長を達成し、気付けば大きな組織のナンバー2に。その時に流行しだした、「エクステンション」。これからはこの時代! と順風満帆だった美容サロンを飛び出し、このエクステンションのメーカー的立ち位置で起業することになりました。

 そこから5年後には、社員も30名ほどに、売上も好調に推移し、ビジネスアワードで表彰されたり、大手のベンチャーキャピタルから投資を受けたりするほどになり、エクステンションの業界で、トップシェアを獲得するところまで来た頃には近々上場目前か? と関西の若手起業家の間では噂となるほどでした。

 「その頃転機が訪れた」と話す、阪口さん。それはご自分のお子さんが誕生した際に、今までは起業家として数年から数十年単位で社会を見ていたが、子供の誕生で数十年、孫世代のことまで想いを巡らし、100年先までの社会のことを考えるようになったそうです。上場間近の自分の会社の事業そのものを100年単位で考えた時、自身の行っている事業が劇薬の染料で髪の毛を染めて、その廃棄物が公害を撒き散らしているところに疑問を感じ、好調であった事業を継続していくことを諦め、大転換する決意をしました。そこからは社員もほとんどいなくなり、たった一人に。売上も好調時には十数億あったそうですが、数千万に下がったそうです。それでも、次代を見据えた事業は何か? と問い続け事業探求を続けたそうです。

森本喜久男氏との出会い カンボジアとの交流から各地へ

 この自問自答で苦しんでいる頃に「カンボジアに凄い日本人がいる!」ということを聞きつけた阪口さん。何が何でも会いたいと一方的に会いに行くことに。そこには、世界中のテキスタイルブランドのオーナーがワザワザ、カンボジアの田舎へ、電気、ガス、水道もない村(伝統の森 http://ikttjapan.blogspot.jp/p/blog-page_20.html)に買い付けに来るという、カンボジアの伝統工芸品である、クメール伝統織物研究所を20年前から起こした森本喜久男氏でした(先日2017年7月お亡くなりになりました)。

 元々京都で手描き友禅の職人であった森本氏は内戦が続くカンボジアで世界最高峰の絹織物に出会い、戦火で消え行く伝統技術の伝承を自らが行う事を決意し、何もない原野に、村を作り、人を雇い最盛期には400名近い従業員を村に住まわせ工房から学校まで創っていったそうです。機械らしきものも何もない中で、素晴らしい絹、綿の織物を手作業で作り上げている現場に行って、衝撃を受けた阪口さん。

 全くのゼロから村をつくり、原料である、絹、綿も、自前で、畑を開墾し、木を植え、蚕を育て、天然の素材から、染料を作り、公害を出すこともなく、まさに持続する事業モデルがそこにあるところに感銘を受けたそうです。そこから髪の毛に自然の染料ができないか? と森本さんと一緒にチャレンジをスタートさせました。

 商品化には至っていないものの、このチャレンジをヒントに、森本氏が事業化しているモデルを阪口流に変化させ、シャンプーや洗剤の開発をスタートさせました。現地で森作りを開始したのが、今から3年ほど前、「つくればつくるほど、つかえばつかうほど、体と地球が健康になる生活商品。環境破壊ではなく環境改善を」というコンセプトを固め、それに合致した事業モデルを見つけては商品化、ブランド化を行い、生活用消費財を中心に商品点数も増えていきました。


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