早実の清宮幸太郎はどこへ行くのか。どこへ行くのが〝正解〟なのか。西東京大会決勝で東海大菅生に敗れ、悲願だった3年生夏の甲子園出場は叶わず。歴代新記録となるはずだった高校通算108号も打てなかったスラッガーの進路に、改めて注目が集まっている。
清宮本人は決勝戦終了後、まだ決めてないのか、という質問に「そうですね」と答えており、結論を明言していない。現時点で考えられる選択肢は、早大進学か、プロ入りかの二者択一だ。いきなりメジャーリーグ挑戦、あるいはプロと早大通信教育課程の〝二足のわらじ〟、などといった憶測も流れているが、現実的な可能性となると極めて低い。
よく知られているように、清宮の父・克幸氏はラグビーのトップリーグチーム、ヤマハジュビロ監督で、現役時代は主将として早大ラグビー部の黄金時代を築いた人物。現在も早大との結びつきは強く、早くから幸太郎を早大へ進学させるようにと強い要望を受けていると言われる。実現すれば、慶応大の高橋由伸・現巨人監督が持つ六大学通算最多本塁打記録23本の更新も夢ではない。
一方で、プロ野球サイドからの〝勧誘〟もヒートアップする一方だ。かねてから巨人をはじめとするスカウトたちはもちろん、評論家の重鎮・野村克也氏も「早くプロに入ったほうがいい」と熱烈なラブコール。さらに、侍ジャパンの稲葉篤紀新監督も就任会見で「非常に興味がある選手」と、2020年東京五輪の代表メンバーに加えたい意向を示した。
しかし、矛盾するようだが、これだけプロ球界が清宮のプロ入りを急がせているのは、現時点での清宮の〝本当の評価〟がマスコミに出ているほど高くはないからだ。高校通算最多タイの107本塁打を打ったとはいえ、甲子園では僅か2本。昨秋の東京大会では日大三高のエース桜井周斗に5三振を喫し、今春の選抜では打点、本塁打ともにゼロで2回戦敗退。今夏の西東京決勝戦でも一発が出ず、守備でもミスをして失点にからんでいる。
私が取材した中で、「清宮ならプロ1年目から大活躍できるだろう」と話しているスカウトや評論家はひとりもいない。高卒で主砲に成長した最近の例を見ても、今年、侍ジャパンの4番を務めた筒香嘉智(横浜高校)ですら、DeNAの4番に定着するまでには4年かかった。日本ハム・中田翔も大阪桐蔭高校時代は「スイングスピードは高校球界随一」と騒がれたが、一軍の戦力になるまでに3年を要している。ちなみに、ふたりとも30本塁打を越えたのは、筒香が16年44本、中田が15年30本とそれぞれ1シーズンだけだ。