世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年8月30日

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 英フィナンシャル・タイムズ紙コラムニストのガードナーが、7月24日付け同紙にて、西側とトルコの対立は、中東の不安定を増大させ、トルコをロシアの側に追いやることにもなるとして、EUにトルコとの関税同盟更新などの配慮をするよう求めています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/LisaAnfisa/seamartini/Dreamcreation/Flamencodiablo/seriga/Ingram Publishing)

 トルコが西側から離れ東を向き始めていることは長い間明らかであったが、今やトルコにおける不安定が如何に地域全体に影響を与えているか、明らかになってきた。

 トルコとドイツは、トルコの警察によるドイツ人人権活動家の逮捕をめぐり対立している。トルコと他のNATO加盟国との関係も悪化している。

 トランプはサウジ陣営とトルコの同盟国カタールとの危機をもたらし、中東における米国最大の基地をリスクにさらしたが、米英仏はシリアとイラクにおけるイスラム国(IS)との戦いでシリアのクルド人民兵に頼り、NATOのインジルリク空軍基地(トルコ南部)へのアクセスを危険にさらしている。

 シリアでは、トルコが支援する反乱軍が米主導の対IS有志連合の代理者と既に戦っている。

 トルコは、クルド問題での西側の同盟国との対立の反動で、ロシアおよびイランとの戦術的同盟関係に入っている。トルコは、カタールとともにこの同盟に引き込まれている。カタール問題は、トルコをスンニ派陣営から切り離し弱体化させ、内部的不安定をもたらし得る。

 トルコは昨年のクーデタ未遂の後始末をしている最中である。軍は縮小、官庁、大学、メディアは粛清され、10万人以上が解職され、5万人が投獄された。しかし、トルコはISとクルド労働者党(PKK)(米が支援するシリアのクルド人も結びつきがあるとされている)の反乱にもさらされている。

 西側は時には、トルコがプーチンの手に落ちることを傍観し、トルコを失うことをすでに諦観、許容しているように見える。EUには特別の責任がある。EUは、かつてはトルコにとり戦略的な要であり改革の原動力であったが、10年前、トルコのEU加盟を妨害し始め、それ以来態度が定まらない。

 エルドアンは、4月の憲法改正国民投票により、権力均衡の束縛なしに統治できるようになった。EUとの経済的関係を、面倒な政治的制約や司法的監視なしで維持することを望んでいる。欧州、NATOとの亀裂が加速している限り、それは幻想である。

 トルコ経済は、低利の融資に依存しており、脆弱である。クーデタ後、約1000の企業が収用され、法の支配には大きな疑問符がつき、投資を妨げている。外交・防衛政策は、その場しのぎの様相を呈し、クルド人勢力の伸長への対応という一点でしか繋がりがないように見える。シリアのクルド人がISの拠点ラッカを奪い、イラクのクルド人自治政府が9月に独立についての住民投票をしようとしている中、トルコは攻撃の誘惑にかられるかもしれない。

 ドイツとトルコは、制裁の報復合戦に至る寸前である。独政府はトルコへの武器売却を見直し、トルコ政府はトルコにおける独企業のブラックリストを作成しているとされる。しかし、EUには何らかの梃子があるはずだ。

 双方は、冷静になれば、防衛とテロ対策における協調、トルコが存亡にかかわると見なすクルド問題へのEUの関与拡大に価値を見いだすかもしれない。トルコのEU加盟は問題外だが、9月の独総選挙後、EUはトルコとの関税同盟の劇的な更新を推進すべきである。それは、ぐらついているトルコの法の支配の立て直しに助けとなり得る。トルコとの取引があるとすれば、何らかの価値あるものにしなければならない。

出典:David Gardner,‘Turkey’s eastward shift can be halted’(Financial Times, July 24, 2017)
https://www.ft.com/content/ad65e8d4-7049-11e7-aca6-c6bd07df1a3c

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