2024年4月24日(水)

Wedge REPORT

2010年9月21日

 「パブコメの性格上、賛成の人はあえてそういった意見を寄せない」(反対や懸念が多かったパブリックコメントについて。国会の議事録の要点を編集部が抽出。以下同)

 「(産業界)9団体がどこまで腹を括っているか、今後よく議論したい」(法案は拙速との産業界の批判に)

 「マニフェストに掲げて選挙を戦ったわけだから、これほど大きな国民に対する問題提起はない」(広く意見を聞いていないとの批判に)

 菅直人氏と小沢一郎氏が代表戦で競った「政治主導」の危険性は、先の通常国会に提出された地球温暖化対策基本法案に典型的に見ることができる。省庁間調整や、専門家からの意見聴取、懸念を表す層への説明が足りないまま法案を上程した政権は、批判に対して冒頭のような開き直った答弁を続けた。

温暖化対策基本法の
不適切なプロセス

 基本法案の端緒は、鳩山由紀夫前首相が昨年9月、組閣直後に国連総会で行ったスピーチである。「すべての主要国による公平かつ実効性のある枠組みの構築及び意欲的な目標の合意」という前提つきで、2020年段階で1990年比25%減という温室効果ガス削減目標を掲げた。

 環境省内で成案化された基本法案は、この鳩山演説の中期目標に、長期目標(50年段階で90年比80%削減)を加え、そのための具体策として、排出権取引制度、環境税、フィードインタリフ(再生可能エネルギーの全量買取制度)の通称「3本柱」を明記している。

 しかし、基本法案だけでは、削減目標を達成するためにどんな省エネ投資がどれくらい必要であり、それが経済や雇用にどの程度の影響を与えるのかが見えないため、法案の是非を議論できない。そこで「中長期ロードマップ」(小沢鋭仁環境大臣の試案)が用意され、20年段階で、太陽光発電の目標値は5000万キロワット(05年の導入量144万キロワットの35倍)、風力発電は1131万キロワット(同10倍)、新車販売の約半分がハイブリッド車(プラグイン含む)か電気自動車……といった施策が列挙された。風力発電にそんな設置場所はないとの声も聞かれるくらい力強い内容である。

 基本法案とロードマップは社会をひっくり返すほどのインパクトを持つが、その成案化プロセスは不適切だった。環境問題に関する重要事項を審議すると法で定められている中央環境審議会に、法案の粗い概要が示されたのは2月10日。条文で示されたのは2月26日である。たった2回の議論で3月12日には閣議決定。「なぜこんな重要法案を中環審に諮問せずに意見交換だけで上程するのか」との批判が委員から出された。

 ロードマップはもっとひどい。既に昨年末に検討が始まっていたが、その場は法的位置づけのない「検討会」で議事は非公開。3月19、26日の最後の2回だけは公開され、「小沢試案」として3月31日に発表。衆議院で基本法案の審議が始まった4月20日にギリギリ間に合わせた格好だった。

 はじめに演説で数字が決まって、法律書いて、根拠となるロードマップはその後、という“あとだしジャンケン”である上、議論が尽くされていないまま国会論戦に突入しているから、穏やかに済むはずはない。事実、さまざまなボロが出た。

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