「このロードマップは各省との協議というものは行っていない」(4月23日の衆議院環境委員会、寺田達志環境省地球環境局長の答弁)
「風力発電の導入量は、率直に言って、なかなか厳しい数字。ただ、これはあくまでも小沢試案なので、国として決めているわけではないし、経済産業省としても、この数値を我々が認めて達成目標に向けてやっていくということではない」(4月20日の衆議院経済産業委員会、増子輝彦経済産業副大臣の答弁)
要するに、ロードマップは、内閣としてオーソライズされていない。だからこそ小沢„私案„に留まったのだ。環境省と経産省は、中期目標の解釈すら一致していない。
小沢環境相「(すべての主要国による……という前提条件が満たされていない場合も)環境省としてはできる限り2020年、25%の真水での削減を目指して頑張っていく」
直嶋正行経産相「率直に言って真水25%というのは非常に難しい数字だというふうに思っております」
よく閣議決定できたものだ。
こだわり続けた削減と成長の両立
さらに、ロードマップには、専門家たちを驚愕させる、ある試算が掲載された。「25%削減でGDPが0.4%増える」という結論を導いた、伴金美・大阪大学経済学大学院教授による経済モデルである。
下図を見てほしい。鳩山前政権は昨年10月~11月、年末に控えたコペンハーゲンでの国連気候変動枠組条約第15回締約国会議(COP15)に向け中期目標が経済・社会に与える影響を試算するべく、専門家に検討を急がせていた。官邸所管の「地球温暖化問題に関する閣僚委員会・副大臣級検討チーム」の下に置かれた、このタスクフォースの中間取りまとめでは、3つの経済モデルはいずれも「25%削減はGDPにマイナス」という結論を導いた。報道によると11月24日に報告を受け取った副大臣級検討チームでは「このまま数値が出て行くと、国民にネガティブなイメージを与える」(福山哲郎外務副大臣〈当時〉)と懸念が出され、小沢環境相は記者団に、驚愕の発言で専門家の差し替えに言及した。
「鳩山政権のやりたいことを応援してくれるみなさんとやりたい」
研究者に対する政治家の態度として、これは大いに問題だ。この姿勢とは無関係と信じたいが、結果的に、小沢試案では政策を後押しするモデルが提示されたのである。
伴モデルは、政策決定の根拠として用いるにはふさわしくない。その最大の問題は、「経済モデルからCO2削減と経済成長の両立が導かれたというより、そもそも経済成長するように前提の数値を変えている」と読み取れることにある(詳しくは上図の脚注参照)。