これが最後のダイエット

2017年9月30日

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 ここ数年、「グルテンフリー」がダイエット法として話題になっています。「体にいいし、痩せる」。グルテンフリーを実践する人たちは、このように思っているようです。

(minoandriani/iStock)

 この傾向は、ヨーロッパやアメリカなどではさらに強く、グルテンフリー食品はヘルシーフードという理解が一般的になっているようです。2015年にアメリカのナッシュビルで開催された世界最大の食と栄養会議・展示会「Food & Nutrition Conference EXPO(FNCE)」では、グルテンフリーの認証マークをつけた食品が数多く展示されていました。さらに宿泊したホテルでも、朝食会場では写真のように「グルテンフリーコーナー」が設けられ、多くの人がこのコーナーを利用しているのが印象的でした。欧米では、グルテンフリーはいつでも、どこでも口にできる食品の選択肢の一つになっているようです。

ホテルの朝食でもグルテンフリーが提供されている

 このようにグルテンフリーが注目を集めたのは、アメリカの女性人気司会者がグルテンフリーを始めたことがきっかけになったという話もありますが、日本ではなんといってもノバク・ジョコビッチ選手の影響が大きいのではないでしょうか。

 ジョコビッチ選手といえば、男子テニス界のスーパースターです。2015年に、ジョコビッチ選手のグルテンフリーによる食事管理を紹介した書籍『ジョコビッチの生まれ変わる食事』(三五館)が日本でも出版され、「体にいい」「ダイエットに効果がある」と評判になりました。

 ジョコビッチ選手はグルテンフリーを実践することで、めまいや筋肉の張り、疲労などから解放され、肉体的にも精神的にも最高の状態を得ることができたと述べています。また、体重も減ったといいます。

 2015年といえば、全豪オープンやBNPパリバ・オープン、ウィンブルドン選手権など名だたる試合で優勝しており、まさに絶好調の年でした。食事にも細心の注意を払い、コンディションを管理していたのだろうと想像できます。

本来はセリアック病患者たちのための食事療法

 ところで、グルテンフリーをよく理解しないまま「ダイエット法の一つ」と思い込んでいる人もいるようですので、念のためグルテンフリーについて説明しておきましょう。グルテンフリーとは、小麦やライ麦、大麦などに含まれるグルテンを除去した食事法のことをいいます。

 グルテンはグリアジンとグルテニンという2つのたんぱく質が水分によって結びついてできるたんぱく質で、小麦粉などに粘りと弾力をもたせます。パンやパスタ、うどんなどのモチモチした食感は、グルテンによるものです。

 料理のレパートリーを広げるのには便利なグルテンですが、世のなかにはグルテンに対して免疫系が反応してしまう人がいます。こうした人がグルテンをとってしまうと、小腸の炎症性疾患(自己免疫疾患)を引き起こすセリアック病を発症することがあります。セリアック病の主な症状は、慢性の下痢や腹部の痛みのほか、頭痛や湿疹などが現れることもあります。グルテンフリーはもともと、こうしたセリアック病患者や、グルテンに過剰に反応するグルテン不耐症の人が、グルテン含有食品の摂取を控えるために行っている食事療法です。欧米でグルテンフリーが注目されているのは、実はこの点も大きいのです。

 日本ではあまり聞きませんが、欧米では大変多くの人がセリアック病と診断されており、英国国立医療技術評価機構の2016年推計で500万人以上、米国食品安全医薬局(FDA)によると2007年で150万人から300万人に上り、その数は増加傾向にあるといいます。

「グルテンフリー=アレルゲン物質ゼロ」ではない

 これに加えて、ジョコビッチ選手らの体験談が広がり、グルテンフリーは健康やダイエットに効果的という話が欧米のセレブ層から一般の人にまで浸透し、今や欧米ではグルテンフリー食品の市場は拡大の一途をたどっています。

 余談ですが、欧州委員会規則は2016年7月から、グルテンフリー食品と表示するには、食品中のグルテン含有量が20mg/kg 未満なら「gluten free(グルテンフリー食品)」、100㎎ /kg 未満なら「very low gluten(超低グルテン食品)」と表示できるとしました。アメリカやカナダなどにも認証機関があり、ほぼ同じような表示をすることが求められています。消費者にとって、こうした表示はグルテンフリー食品を選ぶ際の基準となっています。

スーパーマーケットに並ぶグルテンフリーのスイーツ

 ちなみに日本には、グルテンフリーの表示に関して規制はありません。ただし、小麦は食物アレルギーの原因になる食材として「特定原材料」に指定されており、たとえ微量であっても表示しなければなりません。欧米の表示基準は「小麦アレルゲンが含まれていない」ということではない点に注意が必要です。

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