世界の記述

2017年9月28日

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宮下洋一 (みやした・よういち)

ジャーナリスト

1976年、長野県生まれ。18歳で単身アメリカに渡り、ウエスト・バージニア大学外国語学部を卒業。その後、スペイン・バルセロナ大学大学院で国際論修士、同大学院コロンビア・ジャーナリズム・スクールで、ジャーナリズム修士。スペインの全国紙「エルペリオディコ」で記者経験後、南仏ペルピニョンとバルセロナを拠点にするフリー・ジャーナリストとして、欧州に止まらず、世界各地を取材し、月刊誌『世界』(岩波書店)、『文藝春秋』(文藝春秋)等で、報道記事やルポルタージュを発表している。共同通信・特約記者を兼務し、フランス語、スペイン語、英語、ポルトガル語、カタラン語を話す。著書に、『卵子探しています』(小学館)などがある。

 昨年6月、「番狂わせ」で世界を騒がせた英国のEU離脱「ブレグジット」─。投票から15カ月が過ぎた現在、同国では、在留外国人家族が不透明な将来への不安を募らせている。

(iStock.com/wildpixel/tintin75)

 ブレグジットが世界に及ぼす影響は、主に世界経済やEUの単一市場経済の揺らぎである。各国に点在する英国企業の撤退などによる経済損失の可能性が懸念されている。

 しかし、こうした経済的な影響以外にも、英国に住む他国籍市民が、「定住資格」や「市民権」を以前のように取得できない問題が起きている。

 長年、英国に住むスペイン人女性(49歳)とオランダ人男性(同)の夫婦から生まれた長男(15歳)と長女(12歳)が、「定住資格」を拒否されたニュースが今年4月、英紙ガーディアンで報じられた。

 子供は、ともに英国生まれの英国育ちで、両親と違って国外居住経験はない。「定住資格」取得には、同国に5年以上合法的に居住している必要がある。母親は「イギリスで生まれ育った息子たちの方が、我々よりも資格を得る価値が高いはずだ」と指摘。1週間後、子供たちに認可が下り、この問題は解決した。

 テリーザ・メイ首相は、6月に開かれたEU首脳会談で、「英国に住むEU市民の在住権は保護したい。家族が離れることはない」と明言。しかし、他国首脳の反応は好ましくなかった。

 欧州連合法によると、EU市民とその子供たちは、「定住資格」を申請する必要はなく、英国で暮らす権利を持つが、今後の動きは不安定。移民拒否の色合いが濃いブレグジットは、東欧などからの出稼ぎ移民に冷淡で、彼らを憂鬱(ゆううつ)にさせているのも事実だ。

 2児の親でポーランド出身のディリック夫妻(30代)は、次のように明かす。

 「私たちの子供は、市民権がありません。滞在許可を持つのみですが、英国人同様の暮らしは期待できません。ブレグジット直後、家族で帰国を考えました。東欧移民に対する偏見もあるからです」

 一方、ドイツ連邦統計局によると、昨年ドイツで市民権を取得した英国人の数は、2865人で前年比361%増の過去最高。在住英国人の身分が不安定になることを危惧した結果で、この動きはフランスでも起きている。

 正式な離脱は19年3月29日。現時点ではブレグジットの未来は予測できないが、特別措置により生活が急激に変化しないことを、在留外国人たちは望んでいるようだ。

  
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◆Wedge2017年9月号より

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