世界の記述

2017年8月22日

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大西康雄 (おおにし・やすお)

日本貿易振興機構(ジェトロ)アジア経済研究所・上席主任調査研究員

1977年早稲田大学政治経済学部卒、アジア経済研究所入所。駐中国日本大使館専門調査員、中国社会科学院工業経済研究所客員研究員、アジア経済研究所地域研究センター長、JETRO上海センター所長などを経て現職。

 7月24日に中国共産党中央政治局会議が開催された。一義的には第2四半期の経済指標公表(同17日)を受けて下半期の経済政策を議論する場だが、見逃せないのは、例年8月に開催される(内容等は公表されない)北戴河会議や今秋の党大会を控えたタイミングでのハイレベル会議であることだ。

 ここで確認された政策方針は、我々が想像する以上に重要な意味を持つ。なんといっても中央政治局のメンバー25名は「チャイナセブン」と呼ばれる中央政治局常務委員や同委員候補者等で構成される文字通りの最高指導部である。

 公式報道から注目すべき点を指摘すると、第1に、サプライサイド構造改革、すなわち「過剰生産能力削減・住宅在庫削減・脱レバレッジ、企業取引コスト引き下げ、脆弱部分補強」の方針が明記されたことがある。同方針は、2015年に打ち出された後、景気下支えのための公共投資拡大によって曖昧になった時期もあるが、再度確認された。政治的には、習近平主導の構造改革優先路線が国務院主導の景気優先路線を抑え込んだ、との見方もできる。

 第2に、①「ゾンビ企業」の処理、②累積した地方政府の債務リスクの解消、③金融の混乱の収拾、④不動産市場の安定、⑤外資と民間の投資環境の安定、⑥民生の重視と雇用の促進、など改革推進の具体策が列挙されている。このうち「ゾンビ企業」の処理については、会議直後に国務院(政府)が、中央政府管轄企業(グループ会社69、傘下の子会社3200)の「年内の会社制への改変」を求める「実施プラン」を発表しており、取り組み強化が決定されたと考えられる(新華社報道)。

 もっとも、会社制への改変自体は早くから国有企業改革の基本として実施されてきた経緯があり、今後について楽観は禁物かもしれない。同「プラン」では、「党の組織指導の強化」が改めて謳われており、中央管轄国有企業経営陣の人事権を共産党が手放さないことが効率的経営を妨げている現実からして、改革が不徹底に終わる危惧もある。

 残る具体策のうち②③④は、いずれも08年のリーマンショック対策で行われた4兆元(当時レートで約52兆円)公共投資を淵源とし、その後も投資主導の成長モデルから脱却できなかったこと、さらには「市場化改革」が思うに任せない中で深刻化した問題への対策である。

 このように問題点と対策は明らかとなっており、その実施如何はやはり政権の本気度がキーポイントとなろう。上記してきた諸改革の進展具合は、党大会後に始動する習第二期政権の行方を占う試験紙の意味を帯びている。

(iStock.com/Wei-Hua/Ingram Publishing)


  
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