世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2017年9月29日

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 ウォール・ストリート・ジャーナル紙の8月27日付け社説が、韓国の財閥の時代は終わり、財閥は変革を求められている、と論評しています。要旨は次の通りです。

(iStock.com/danleap/iZonda/TongRo Images Inc/Cesare Ferrari)

 サムスン・トップの起訴は、韓国の政治経済にとり転換点になる。8月25日、裁判所はサムスン創業者の孫である李在鎔に対し朴槿恵前大統領への790万ドルの贈賄容疑で5年の実刑判決を言い渡した。朴槿恵政権は李一族によるサムスン経営権の継承を容易にするための関係会社の合併を認めた。裁判所はこれを「汚職関係」に当たるとした。

 財閥(チェボル)は戦後の韓国発展の原動力だった。しかし、権力乱用の悪しき例でもあった。これは、法の平等な適用を求める有権者の批判と一層大きな利益の配分を求める投資家の要求によって変わろうとしている。

 文在寅大統領は、李在鎔等財閥トップを特赦することはしないと言って来た。更に文在寅は経済学者で株主権利活動家の金尚祚を公正取引委員会の委員長に任命した。明確な左派である新大統領は「財閥狙撃者」と言われている。しかし、新政権は具体的な改革措置については慎重である。金公取委員長は財閥の自発的な行動を通じて改革したいと述べている。

 このことは、議会には財閥支持者が多くいることを反映している。文政権は議会で4割の議席しか保有していない(対決法案承認に必要な3分の2に満たない)。そのため大統領は既存の規制権限を使わざるを得ない。法律はあるが厳格な実施はされて来なかった。

 財閥創業家は財閥の株の小部分しか保有していないが、傘下会社間の株の持ち合いを通じて財閥全体の経営権を維持しようとする。更に相続税が創業家の経営権を薄めていく。そのため長年財閥は経営権の継承に当たり政府による規制見逃しを頼りにしてきた。

 2015年にサムスンが(経営権継承のために)行った建設部門と管轄会社の合併により、少数株主は70億ドルの損害を被ったと推計されている。この合併は政府系の国家年金機関(資産総額5000億ドル)の支援なくしては失敗したであろう。年金機関の前理事長等は6月に職務乱用で起訴された。その後サムスンは株主の行動に対抗するための「自己株式の保有」制度を廃止、企業統治の改革を始めた。サムスンの株価は上昇した。韓国株の安値感は段々縮小している。

 財閥は今後も存続していくだろう。改革への抵抗もあるだろう。サムスンは米国のヘッジファンドであるエリオット・アソシエイト等が求めている持ち株会社化の要求に抵抗している。しかし、李在鎔の起訴は潮目の変化を示している。政治、経済的圧力は財閥特権の時代を終わらせようとしている。

出典:‘The End of the Chaebol Era’(Wall Street Journal, August 27, 2017)
https://www.wsj.com/articles/the-end-of-the-chaebol-era-1503857632

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