ネルソン・コラム From ワシントンD.C.

2010年10月4日

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クリス・ネルソン (Christpher Nelson)

政治ジャーナリスト

アメリカのシンクタンク「サミュエル・インターナショナル・アソシエイツ」所属。特に日本、中国・台湾、朝鮮半島問題に焦点を当てたアジア外交政策のコンサルタント。1970年より下院外交委アジア小委員会のスタッフや上院民主党政策委員会のアジア政策顧問などを歴任した経験により、議会のみならず米政権の内情に詳しい。現在は、外交政策や通商問題のインサイダー情報誌「The Nelson Report」発行。

 そもそもティーパーティー運動は、次のようにして始まったらしい。「日本でもティーパーティーが起きるか」という観点からすると、運動の発端はこの物語全体を通して最もあり得なさそうな話だ。

主婦のおしゃべりが政治を動かした

 今からほんの1年余り前の2009年4月、フィラデルフィア郊外に住む専業主婦2人(どちらも保守的な共和党支持者だが、決して「党の活動家」ではない)が自宅に集まり、「キッチンテーブル・パトリオッツ」なる組織を作り、地元に住む保守派の仲間にメールを送ったり、電話をかけたりし始めた。

 ここで「愛国心」というテーマに注意するといい。何しろ、全国のティーパーティー支持者の大半とは言わないまでも、かなり多くの人を奮起させているのが、愛国心のようだからだ。しかも、ここには不快なトゲが込められている。というのも、職業政治家すべて、政府職員すべて、特にワシントンで働いている人はすべて、愛国心が疑わしいという確信に基づいていると思われるからである。

 ともかく、2人の専業主婦が発端なのだ! 2人はすぐに「ロウアーバックス郡ティーパーティー・パトリオッツ」から温かい歓迎を受け、世界的な経済危機と戦うためにブッシュ政権下で始まり、後にオバマ政権が引き継いだ金融、経済両面の「救済」政策すべてと戦うことに共通の利益を見いだした。

 民主党は、ここには極めて都合のいい「記憶の欠落」があると訴えているが、今はそれは問題ではない。

 この「TARP(不良資産救済プログラム)と戦え」という態度、つまり、「ウォール街」と「バンカー」、そしてビッグ3の救済と戦う姿勢が一気に盛り上がるきっかけとなったのは、オバマ政権が国民健康保険計画に焦点を絞ったことと、それには10年間で推定1兆ドルの膨大なコストがかかるということだった。

 ティーパーティー運動はフィラデルフィア市内や周辺だけで起きたことではなかった。ふたを開けてみれば、カリフォルニア州サクラメントで結成され、現在主要団体として活動している「ティーパーティー・エクスプレス」をはじめ、全国各地で起きていた。

 インターネットや携帯電話、それにフォックスTVのおかげで、こうした怒れる人々や彼らが運営する小さな組織が全米で立ち上がり、突如、生き物に近いような何かが生まれた。1つ、生き物と異なる実に興味深い点は、「ティーパーティーの頭」、つまり「代表者」が存在しないことだ。

 ほかにも主要なティーパーティー団体がいくつも生まれて発展した。驚くまでもなく、関係者には政界の著名人も何人かいる。全員が共和党支持者で、ティーパーティー団体で何らかの指導力を発揮しているか、そう主張している人々である。

 だが、好機を見て取り飛びついた有力者は、本物の「草の根」運動を利用しているのであって、自ら何かを始めたわけではないようだ。

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