9月初旬に沖縄県・尖閣諸島近くで発生した中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突事件は、9月24日、那覇地検が逮捕・送検された中国人船長の「処分保留釈放」を決定してから、徐々に終息する方向へと向かっている。今一度、この事件の経緯と背景、日中関係の今後の行方を検証しておく必要があるだろう。
日中関係と日本の国内世論、そして民主党政権を大いに揺るがしたこの大事件の背後に何かあったのか。中国政府はどうしてあれほどまでの超強硬姿勢で日本に当たってきたのか。加えて、逮捕者の「処分保留のまま釈放」という日本側の行った敗北主義的意思決定は今後の日中関係に何をもたらし、中国政府は今後どのような出方を見せてくるのか。
中国のやり方は「やくざと同じ」
9月初旬に事件が起きてから、中国政府はまず外交ルートを通して日本に圧力をかけてきた。丹羽宇一郎駐中国大使を5回も呼び出して「漁民と漁船の無条件返還」を求めたことは、中国にとってのギリギリの「外交努力」でもあったが、石垣簡易裁判所が19日、公務執行妨害容疑で逮捕・送検された中国人船長の拘置期限の10日間延長を決定して以来、中国は日本に対して「交渉」から「対抗措置」を全面的に打ち出す方向へと転じた。
日中間の閣僚級以上の交流と航空路線の増便を巡る政府間交渉に向けた接触が中止されたのに続いて、1000人の日本青年代表団の上海訪問の受け入れが実現の直前になって延期されたり、SMAPの上海コンサートが事実上中止されたりして、「報復」は日中交流のあらゆる方面に及んでいる様相である。もとより、中国人船長の拘置期限延長が決められた前から、東ガス田開発問題をめぐる両国間交渉がとっくに延期されるなどの「対抗措置」がすでに講じられていた。
だが、いわゆる「尖閣問題」とは本来なら無関係であるはずの上記の事柄が「対抗措置」の対象となると、中国政府の対応はもはや政府間の外交駆け引きの領域を超えて、なりふり構わずの「超外交戦」の境地に達しており、ただの八つ当たりともいえるようなレベルの低い喧嘩となっていた。
石原慎太郎東京都知事から「やくざと同じだ」と評されたこのようなやり方は、世界の大国のやる外交としては、まことに恥ずかしい程度のものだが、当の中国政府には、「恥を忍んでいても」そうせざるをえない「苦衷」があった。
無能ぶりを露呈した中国政府の対応
今回の事件への対応にあたり、日本の領土であるはずの尖閣諸島の帰属問題に関して、中国政府はそれが中国の領土であることを強く主張して一歩も譲らない姿勢をとっている。しかも、「中国の領土と主権を断固として守る」という「決意」のほどを内外にむかって明確に宣言している。
しかしながら、実際の状況としては、尖閣諸島は紛れもなく日本の領土となっており、日本国の実効支配下にある。日本の海上保安庁が尖閣諸島の周辺海域で中国の漁船を実際に拿捕したことは、尖閣諸島は日本の領土として日本国の実効支配下にあることの何よりの証拠である。