関西発!オモロイ社長、オモロイ会社

2017年11月28日

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杉浦佳浩 (すぎうら・よしひろ)

代表世話人株式会社代表

三洋証券株式会社入社(昭和62年)。鹿児島支店にて勤務。地元中小企業、個人富裕層の開拓を実施。 日経平均最高値の2カ月前に退職。次に日本一給与が高いと噂の某電機メーカーに転職。埼玉県浦和にて、大手自動車メーカー、菓子メーカー、 部品メーカー等の主力工場を担当。 退職時は、職場全員から胴上げ。そして、某保険会社に20数年勤務後、平成26年末に退社。在社中は、営業職、マネジメント職を経験して、リテール営業推進、若手人財育成を中心に担当していた。 社外の活動も活発に行っていた。平成27年1月1日、代表世話人株式会社を設立。
同社代表取締役に就任。世話人業をスタート。

新規就農の農家からの仕入れが90%超

 美味しい野菜を売っています! と自己紹介がスタートする、「坂ノ途中」代表の小野邦彦さん。バックパッカー、外資系金融マンから転身し、現在400種類以上のバリエーションある野菜を、通販や、京都、東京合わせて3つの直営店舗で個人向けに販売したり、小売店・飲食店への卸売を展開しています。世の中に出回っている農産物の多くは農薬や化学肥料の使用なしでは生産が成り立たないことに疑問を持ち、環境負荷の小さな農業を広めていくことを「未来からの前借りをしない」の社会を目指すとして、事業活動を行っています。

 現在同社の仕入れは新規就農の農家から90%を超えているとのこと、その理由、同社の事業について、小野社長に伺いました。

未来からの前借りをやめよう

小野社長

 毎年世界でダメになる農地っていくらだと知っていますか? と小野さんは語ります。日本の全農地が460万haに対して、毎年世界でダメになっていく農地は600万haほどにも及ぶそう。日本では、農業と環境問題をリンクさせて語られることはあまり多くありませんが、実は農業というのは、とても強力な環境破壊ツールなのだそうです。環境目線で現代農業をみると、とても危うい。農薬や化学肥料など外部資材へ過度に依存した農業では、当初はラクに収穫できても、次第に土地は痩せ、水質汚染を呼び、農業に不適な農地となっていく。土壌の中に本来いるべき微生物を減らし、草を生えなくし、生き物が住めなくなる、結果として土はカチカチになり、さらに農薬・化学肥料なしでは農産物が育てられない状況となる。その繰り返しは、現在の低コストを得るために、将来から「前借り」をしていると捉えることができると、小野さんは解説します。

 そして、日本の実態についても話が続きます。日本の既存農業者における、有機農地(農薬・化学肥料なしでの栽培を行っている農地)の割合は、わずか0.6%。これは先進国の中で特に低いレベル。中国、韓国よりも小さな割合だそうです。

 しかし、明るい話としては、新規就農希望者の多くが有機農業やそれに準ずる、土を大事にする農業をやりたいと考えているそうです。

 ただ、この新規就農の皆さん、新たに農業を始めるにあたっては、厳しい環境が待っています。狭い、再開墾に手間がかかる、水はけが悪い、日当たりが悪い等々、借りられる農地の条件が悪い。そこで土壌改良に取り組みつつ、少しずつ栽培を始めていくわけですが、就農資金や労力を使い果たし折角の農業への情熱も尽き果て、離脱していく姿を見るにつけ、小野さんはなんとかしないといけないと思ったそうです。

 新規就農者の弱点としては、少量生産しかできない、そこから取引先(販売先)がみつからない。小野さんはその改善に、ITを持ち込み、栽培計画の全体最適化すること、エリアと生産農家を増やすことで改善、解決の糸口を見つけ、出口は通販を中心として安定、拡大しています。

 新規就農者の長所として、実は「意外なほど」美味しい野菜を生産している、その上に坂ノ途中側から、「こんな野菜作ると面白い」という顧客の声に対して、挑戦意欲が旺盛であり、柔軟な栽培に対応してもらえるそうです。その結果、400種類を超える取扱野菜バリエーションを確保できるようになってきたことは購入者側からも大きな魅力になってきています。

 さらに、未来からの前借りをやめるために、必要なこと。それは、購入者、消費者に、季節感を伝え、野菜本来の時期、食べ方を提案していくことだと語ります。

「たとえば、夏の茄子と秋の茄子だと、生育にかかる時間がちがうので、皮や実の厚さ、味わい方が異なります。工業製品のように、品質の安定を追及すると、どうしても栽培の現場が歪んでしまう。そうではなくて、ナスの肉質が固くなってきたら、『ああ、夏も終りね』とそれを受け入れてもらう。生き物としてのブレを楽しんでもらうことが、未来からの前借りをやめることにつながると思っています」

 このように、環境負荷を少なくする、100年続く農業を提唱して成長軌道にある小野さんですが、起業当初、売れない時代があったそう。市場の八百屋さんの便利さに負けないように、ドタバタ走り回って飲食店さん向けに野菜を卸すことから始めました。でも、どうがんばっても市場の安定性やリードタイムの短さにはかなわない。「未来からの前借りをやめよう」というコンセプトに忠実に、できないことはできないと言うようになりました。

「高い、リードタイム長い、欠品もする」そんな僕たちに呆れられながらも、長年付き合ってくださっているレストランさんに支えられています。とニッコリ。

坂ノ途中の概要(ルール化していないことがルール)

 訪問して、一番に気付くのは、なんとも言えない野菜の匂い。1階部分で、野菜の仕分け〜発送業務を行っています。その野菜の匂いを嗅ぎながら階上の事務室で面談。丁度ランチタイム終了直後だったので、応接室にも、美味しいご飯の匂いが充満していました。

 会社で野菜たっぷりのランチを提供しています。自分たち自身が日々野菜を食べることで、それぞれの生産者や品種の個性を知っていこうということで、この制度を早い段階から行っているそうです。

 小野さんに、同社の面白いところは? と質問しますと、「会社でのこと、ルール化していないことがルールなんですよ」と返事が返ってきました。

 例えば、名刺の肩書がフリー。型にはめない。「子育て中」、「無所属」、「Webマーケター」等々自身の実情や、なりたい自分を自由に肩書へ。

 またルール化しないという点では、国内のみに活動を絞っているわけでもありません。2012年にいきなりアフリカ・ウガンダで有機農業の普及活動を始めました。乾燥地域で、乾燥に強いゴマを栽培してもらい日本に輸出したり、旧内戦地域の自生植物からとれる油脂を化粧品メーカーに卸し復興につなげるといったことを展開しています。

 また昨年からはラオスの山間地域でコーヒーの品質向上にも取り組んでいます。森の中で栽培するコーヒーを高品質なものにして販売していくことで、森林伐採や焼き畑に依存しない山間地域の暮らしを提案しています。

「地域内での資源循環を目指すことと、それぞれの個性をふまえた地域間連携を行うこと。その組み合わせで持続可能性を高めることができるのではないか。坂ノ途中の事業展開が、その組み合わせを表現している意図の例になれば。」と話します。

 同社の事業に賛同して協働している農家さんも関西を中心に150を超え、今期の売上は3億円超に。同社のユニークなメンバーは40名ほどになってきています。

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