補講 北朝鮮入門

2017年11月25日

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澤田克己 (さわだ・かつみ)

毎日新聞記者、前ソウル支局長

1967年埼玉県生まれ。慶応義塾大法学部卒、91年毎日新聞入社。99~04年ソウル、05~09年ジュネーブに勤務し、11~15年ソウル支局。15年5月から論説委員。著書に『「脱日」する韓国』(06年、ユビキタスタジオ)、『韓国「反日」の真相』(15年、文春新書、アジア・太平洋賞特別賞)、訳書に『天国の国境を越える』(13年、東洋経済新報社)。礒﨑敦仁慶応義塾大准教授との共著『LIVE講義 北朝鮮入門』(10年、東洋経済新報社)を大幅に改訂した『新版 北朝鮮入門』(東洋経済新報社)を17年1月に刊行予定。

 「反発のレベルが低いね」

 米国によるテロ支援国家への再指定に北朝鮮が初めて反応した11月22日夜。私はたまたま北朝鮮情勢の研究会に参加していた。参加者の一人に速報が入り、その場で皆が朝鮮中央通信をチェックした。朝鮮半島情勢を専門とする研究者と官僚、記者の集まりだったが、そこで一様に漏れたのが前記の感想である。「予想通り」あるいは「予想以上に」激しい反応だと主張した人はいなかった。

米政権が閣議、北朝鮮をテロ支援国家に再指定(写真:UPI/アフロ)

 ところが日本の新聞、テレビには「猛反発」というような記事が目立った。詳しくは後述するが、「反発する談話」などという専門家なら即座に分かる間違いをおかした記事まで散見された。「国難」をあおる傾向に協力しようとしているのか、便乗しているのかもしれないとさえ思える。だが、北朝鮮が態度を変えた時、あるいは変えなかった時に、きちんと判断するためにも現実はきちんと評価しなければいけない。

 仕方ないので、北朝鮮の反応はどんなものだったのかを簡単に紹介しておきたい。

もっとも低いレベルだった発信形式

 まずは形式だ。再指定への反発を表明した北朝鮮国営朝鮮中央通信の記事は次のように始まった。

 朝鮮民主主義人民共和国外務省代弁人(韓国と北朝鮮では報道官のことを「代弁人」と呼ぶ)は22日、米国がわが国を「テロ支援国」に再指定したことと関連して朝鮮中央通信社記者が提起した質問に次のように答えた。

 この「記者の質問に答えた」というのは、北朝鮮が対外的に発信する際によく使われる形式の一つだ。公式の対外発信でもっとも重みのあるのは「政府声明」であり、外務省の出すものでも「声明」「代弁人声明」「談話」「代弁人談話」「朝鮮中央通信社記者の質問への回答」などがある。9月に国連安全保障理事会が新たな制裁決議を採択した際には「外務省代弁人談話」で反発した。

 トランプ米大統領による国連演説に反発して「老いぼれ」と激しい個人攻撃を加えたのは、金正恩国務委員長による「国務委員長声明」だった。国務委員長声明はこの時が初めてだが、北朝鮮の体制を考えれば、現在は国務委員長声明が最も重いということになるだろう。

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