チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年11月11日

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有本 香 (ありもと・かおり)

ジャーナリスト

企画会社経営。東京外国語大学卒業後、雑誌編集長を経て独立。近年とくに中国の民族問題の取材に注力している。『中国はチベットからパンダを盗んだ』(講談社)『なぜ、中国は「毒食」を作り続けるのか』(祥伝社)の他、近著に『中国の「日本買収」計画』(WAC BUNKO)がある。

 先週来、日本の巷は、政府がひた隠しにしてきた「尖閣ビデオ」がインターネット動画に流れた件でもちきりだ。そもそも他国船舶による「領海侵犯」であったこの事件は、その後の展開によって、日本の「国内問題」としてしか論じられなくなった感がある。

 この件が示すように、情報化社会とは、実に“頼りない”面をもつ。事の成り行きによっては、人々の目がいつのまにか陽動され、物事の本質から逸らされるというような現象も頻繁に起こり得る。

中国不信が高まるなかで……

 さて、この事件後、日本の巷で、「中国への不信感」と「自国政権への不信感」が高まる一方となっていた10月下旬、中国政府が、「中国イメージCMを全世界に放映」するプロジェクトを進めていると、中国国営メディアが伝えた。

 何とも古典的な、正面からの「情報戦」に打って出たものだが、真意がいかなるものかは現時点では不明である。

 さしもの中国政府も、このところ世界中で自国のイメージが著しく悪化していることは気になって仕方がないはずだ。ごく最近の、日本との問題や、劉暁波氏のノーベル平和賞受賞をめぐる問題のみならず、近年は先進諸国、途上国ともで摩擦が増えており、米国内でも反中感情が高まってきていた。これには相当に苦慮しているとも見られる。

 今のところは、CMの内容について知る材料は、前述の一報以外にないが、それでも今般の「中国のイメージアップCM」について、興味深いポイントがいくつか読み取れる。

国家イメージCMっていったい何?

 そもそも、国家CMとはいかなるものであろうか。よく知られるところでは、各国の政府観光局によるCMや、自国の農産物などを宣伝するCMなどがある。

 何年か前、大統領自ら微笑んで映っていた韓国観光公社のCMを憶えている向きもあるだろうが、あの類が代表例である。近年、外国人観光客の呼び込みに熱心な日本の政府観光局も、諸外国で、「ようこそ日本へ」CMを流している。

 国家ではなく、州ではあるが、アーノルド・シュワルツネッガー知事が「カリフォルニアへおいでよ」と呼びかけるのも同類である。さらに、カリフォルニア・アーモンド、オージービーフ、イタリアの農産物などのCMも、直接の広告主は業界団体であったりするものの、国家をアピールするCMの一端といえるだろう。

 こうした純商売CMのほかに、政治的なメッセージを伝えるCMもある。

 具体的な事例としては、韓国のそれは、露骨すぎるほどの一例だ。ニューヨークのタイムズスクエアの大スクリーンに、わが国領土である竹島について「独島は韓国領!」と訴える内容のCM映像を繰り返し流したことなどは、記憶にも新しい事例である。これ以前にも、テレビCMで、韓国各地の風光明媚な場所を集めたかのような映像の中に、「独島」を紛れ込ませていたという例もある。

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