2024年4月27日(土)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2010年11月11日

竹島だけでなくピビンパまでも宣伝する韓国

 余談になるが、これらの例が示すとおり、最近、韓国は国家宣伝活動にたいへん熱心である。映像のほか、昨年末には、やはりニューヨークの新聞(ニューヨークタイムズ紙)に、韓国の国民食の一つである「ピビンパ」を宣伝する全面広告を出した。

 竹島の映像とピビンパの新聞広告、いずれも制作には、広報の専門家だという大学教授らを中心にしたプロジェクトチームが携わっている。しかし、裏に控えるのは、当然のこと、韓国政府である。いずれも国家の“広報戦略”の一環なのだ。とくに、韓国料理の「世界化」作戦は、李明博大統領夫人の肝入りだとのことである。

 「今や日本食は世界が愛し、リスペクトする食文化となっているでしょう? 韓国料理もそれに追いつけ、追い越せというわけですよ」と、韓国の食の専門家らが口を揃える。

 先進国入りを目指す韓国にとって、つねに、いずれの分野でも、まず「目指す相手」は日本というわけだ。

 食文化と領土問題、ソフトとハード、両方のテーマで積極果敢な宣伝攻勢を繰り広げる韓国だが、そのやり方は、あからさまともいっていい表現手法である。一方、中国政府がこれから展開しようとしているCMはもう少し、婉曲的表現になると見られる。

中国の狙いはアメリカ人の警戒感を解くこと

 前述の報道では、中国のイメージCMには多くの中国系の人物が登場するらしい。予定されている顔ぶれを見る限り、世界的なコングロマリットの創始者やハリウッドでも大成功をおさめた映画監督など、「実は香港出身」という華人の名前も並んでいる。

 これが第一のポイントである。

 中国共産党政府は、自らに対して向けられているであろう「独裁、圧政」という悪しきイメージから、米国人視聴者の目をそらさせるため、一見、体制や政府と離れたところにいるかのような「個人」を起用する。政治的なメッセージを直接叫んだのでは墓穴を掘ることになろうし、今や米国人にとって、ピザと並ぶケータリングの定番となっている「チャイニーズ料理」をアピールする意味などない。

 そこで、「私たち(中国人)はモンスターなんかじゃありませんよ。あなた方と同じビジネスマンであり、クリエイターですよ」とのメッセージを明るく打ち出し、親近感とフレンドシップ(友好)を訴求する。その役割を、華人セレブらに託したのである。

 中華人民共和国という国家(チャイナ)の国民であるチャイニーズと、米国はもとより世界中に散らばる華僑・華人であるチャイニーズを、うまい具合にごちゃ混ぜにし、見る者の誤認、錯覚も誘いながら、米国人の警戒感を解いていく作戦である。

 当時は単なる投資の呼びかけと思われた、鄧小平時代の「世界の中華民族は同胞」との呼び掛けが、今頃になって俄然、効力を発揮してくるというわけである。

 第二のポイントは、そうしたチャイニーズと対照的にある存在、「少数民族」である。ご存じのとおり、チベット、ウイグルに代表される「少数民族」は、中国政府の泣きどころともいわれている。CMには、その少数民族の若者が、山間の地で、携帯電話を使うシーンが採用されるそうだが、「共産党の治世により、田舎の少数民族にも経済的恩恵がもたらされている」と、世界に訴えたいのであろう。


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