トランプ政権のマイケル・フリン前大統領補佐官がロシアゲート事件に絡んで検察側と司法取引、捜査に全面協力することになり、疑惑解明が一気に進む可能性が出てきた。当面の焦点は、フリン氏にロシア側との接触を指示したのは誰なのか、トランプ大統領はフリン氏の連邦捜査局(FBI)に偽証した事実を知っていたのか、の2つだ。
眠れない最高権力者
トランプ大統領は1週間ほど前、感謝祭の休暇をフロリダ・パームビーチの別荘「マー・ア・ラゴ」で機嫌良く過ごしていた。大統領就任以来、最初の最大の業績になるはずの税制改革法案も、もめていた上院で可決の可能性が見え始めていた。
トランプ氏が上機嫌だったのは、ホワイトハウスのコブ法律顧問から最大の懸案であるロシアゲートについて、モラー特別検察官の捜査が年内に終了するという見通しであることを再三に渡って聞かされていたからだ。別荘からワシントンに戻った時も、お得意のCNNなどメディアに対するフェークニュース批判を連発して意気軒昂なところを見せた。
しかし、12月1日早朝になって状況は暗転、ロシアゲート捜査が年内に終了するというトランプ氏の希望を打ち砕いた。トランプ氏はフリン氏が罪を軽くするためFBIへの偽証を認め、モラー特別検察官と司法取引した、という事実をケリー首席補佐官の電話で知った。
ケリー氏はテレビの報道に驚き、大統領にすぐに伝えたのだ。大統領の反応は「フリンはトラブルにはまった」だったが、機密情報を知る最側近だった人物が検察側の協力者に変わったというニュースはホワイトハウスを震撼させるに十分だった。
トランプ氏はフリン氏が偽証罪で起訴された後、ツイッターなどで反撃に出た。2日朝には「フリン氏を解任したのはペンス副大統領とFBIにうそをついたからだ」とツイート。記者団にも「ロシアとの共謀は絶対にない」と強く否定した。同夜には「フリン氏の人生が偽証で破壊されるのは不公平」「不正直なヒラリー・クリントンの私的メール問題を捜査しないのはおかしい」と連発。
注目されたのは3日夜明け前のツイッター。「解任したコミー前FBI長官にフリン氏の捜査をやめるよう要求したことはない」などとして、新たに浮上した「司法妨害」疑惑を否定した。夜明け前にツイートしたことはトランプ氏が眠れずに事件のことを憂慮していることを示唆するものだった。
共謀より司法妨害か
だが、こうしたトランプ氏の反撃は逆に大統領の首を絞めることになっている。トランプ氏は2日のツイートで解任した理由を「副大統領とFBIに嘘をついたから」としたが、ホワイトハウスはこれまで、解任理由についてFBIへの偽証については指摘していなかった。
しかし、今回のツイートは2月13日の解任時点で、大統領がフリン氏の偽証を認識していたという新たな疑惑を惹起している。大統領は解任した翌日の2月14日にFBI長官だったコミー氏をホワイトハウスに招いて夕食を共にして会談。同氏のメモによると、この席で大統領がフリン氏の捜査をやめるよう求めた。